日本シリーズで采配をふるうDeNAのラミレス監督(中央)
今回の日本シリーズで、ポイントのひとつに挙げられているのがDeNA・ラミレス監督の采配だ。
特集:ベイ19年ぶり日本シリーズ
クライマックスシリーズ(CS)の広島戦でみせた執念の継投が、DeNAの日本シリーズ進出につながったのは間違いない。シリーズでも、CSの再現を待ち望むファンは多いだろう。
シリーズが始まり、その采配でひとつ期待外れだったことがある。先発投手がおおかたの予想通りになっていることだ。第3戦も、DeNAは予想通りウィーランドの先発となった。
シリーズ開幕前日の監督会議で、ラミレス監督は予告先発制を拒否した。ソフトバンク側の再三の誘いを断った姿勢には、「チャレンジャー」として挑むラミレス監督の覚悟が感じられた。だから、ひそかに「サプライズ先発」を期待していた。それが、第1戦は右腕・井納、第2戦は左腕・今永。ソフトバンクの読み通りだった。
第1戦の試合前。ソフトバンクの藤本打撃コーチは「打順は右投手を想定している。(8番の)明石は右左が関係ないし」と語っていた。上位打線は固定だが、下位打線は左打者が中心だった。左腕の今永も分析はしていたというが、7割から8割は右腕の井納を予想していたそうだ。
過去の日本シリーズには、第1戦の「サプライズ先発」で流れをつかんだケースもある。例えば、ヤクルトとオリックスが戦った1995年。ヤクルトの野村監督は、右肩痛を装ったブロスを第1戦で先発に起用。初戦をもぎ取り、4勝1敗でシリーズを制している。ブロスはシリーズ前に右肩を痛めた演技をし、左腕の石井が先発すると周囲に思わせていた。オリックスの仰木監督が相手投手によって打順を組み替えていたのを、逆手に取る戦法だった。
予告先発制のレギュラーシーズンでは、こうした腹の探り合いはもう見られない。しかし、予告先発が採用されないセ・リーグのCSと日本シリーズは、使い方によっては効果はある。実際に、セCSでは井納の起用が当たったといえる。
ソフトバンクはCS最終ステージの楽天戦で、左腕の塩見と辛島を打ち崩せず、敗れている。「左腕」をポイントとすれば、DeNAは第1戦で井納の先発を周囲ににおわせた上で、今永を起用する手はあったのではないだろうか。
ラミレス監督は、井納の第1戦先発について「CSでもみせた大舞台の強さ」を理由に挙げた。だからこそ、信頼する右腕の第2戦起用という考え方もあったはずだ。
「格上」を相手に真っ向勝負に出ているDeNA。せっかく予告先発を拒否したのだから、それを最大限に利用する手はあると思うのだが……。(吉村良二)