主人公の恩田百太郎(右)とその幼なじみ神崎仁。時に衝突しながら、介護を巡る難問の解決に挑む=「ヘルプマン!舞台版・監査編」から
老いと向き合う若い男性介護士たちが奮闘する姿を描き、高齢社会の問題点に迫る介護漫画の代表作「ヘルプマン!」(くさか里樹)。この「ヘルプマン!」を原作にした舞台が、8日から東京都港区の俳優座劇場で始まった。
7年ぶりの上演で、12日まで。前回と同様、脚本と演出を手がけたなるせゆうせいさん(40)は「昨年暮れに母が他界し、独居になった父が要介護認定を受けた。今の自分にも、介護は身近なテーマ。介護する側・される側だけでなく、配役に行政マンを加えたことで観客の目線に近い群像劇になったはず」と話している。
今回は「監査編」と銘打ち、不正を疑われている住宅型の有料老人ホームを巡る物語となっている。
フリー介護士・恩田百太郎(神永圭佑)と、幼なじみで社会福祉協議会職員・神崎仁(伊万里有)という原作でもおなじみの2人に加え、県庁に入って6年目で高齢者支援課に異動したばかりの小池一郎(中村優一)を中心にストーリーが展開する。
ある日、県庁に1人の女性が駆け込んできて、悲痛な声で訴えた。
「このままでは入居者が殺されかねない」
女性は、有料老人ホームの職員だった。ホームには偶然にも百太郎たちと親しく、妻を亡くして入居した老人・服部九作(立川らく朝)が暮らしていたが明らかな人手不足で、入居者が体調不良やけがで救急搬送されるケースが後を絶たない。
さらに、ホームが介護報酬を水増し請求している可能性もささやかれ始めた。小池が課の先輩たちに相談するものの、先輩たちは手間がかかる監査などには乗り出そうとせず、「様子見」を決め込んでいる。服部老人はホーム職員の労働環境の悪さに、長生きすることへの後ろめたさも抱き始めて……。
なるせさんが7年前に作った舞台は、百太郎が無謀にも資格なしで介護の世界に飛び込むという物語だった。今回は、仁の長回しのセリフで介護保険制度の矛盾などを丁寧に解説した上、深刻化する高齢社会に悩み、時にあきらめかけながらも前進しようとする登場人物を描き、幅広い世代の共感を誘う構成に仕上がった。
なるせさんは「介護保険は国が作った制度である一方で、現場レベルでは人と人とのつながり。避けては通れない問題だけに今まさに直面する団塊世代から、出演する俳優たちの若いファン層まで、いろんな年代の方に見ていただきたい」と語る。
「ヘルプマン!」は2003年に男性漫画誌「イブニング」(講談社刊)で連載スタート。2011年に第40回日本漫画家大賞に輝き、2014年までに全27巻が単行本化された。同年12月から週刊朝日(朝日新聞出版)に「ヘルプマン!!」として移籍し、現在8巻まで発売中。
舞台のチケットはプレミアムシート8千円、一般シート6800円。詳細は
http://butai-helpman.website/
。問い合わせは俳優座劇場(電話03・3470・2880)まで。(高橋美佐子)