記者会見で頭を下げる原子力発電環境整備機構の宮沢宏之理事(右)と中村稔専務理事=東京都港区
原発の使用済み燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の候補地選定をめぐり、資源エネルギー庁や原子力発電環境整備機構(NUMO)が開いている全国説明会で、広報業務を委託していた業者が謝礼を約束して大学生を動員していたことが14日、わかった。
NUMOによると、動員で集まった学生は東京や愛知、大阪、兵庫、埼玉の5会場の計39人。業者は12人が集まった埼玉会場では1万円の謝礼、他会場では学生が所属するサークルへの物品などの提供を約束していた。埼玉会場で問題が発覚したため現金の支払いはなかったという。
核のごみの最終処分地選びでは、処分に向いた特徴がある場所を示した全国地図「科学的特性マップ」が7月に公表され、10月に福島県を除く46都道府県での説明会が始まった。
11月6日に埼玉県であった説明会に参加した男子大学生が、座談会の場で「1万円もらえるから参加した」という趣旨の発言をして、問題が発覚した。
この学生は、若年層向けの広報を委託したマーケティング会社「オーシャナイズ」(東京都、菅沢聡社長)の呼びかけで参加していた。同社は慶応大生らが2005年に立ち上げた学生ベンチャー。大学に無料で利用できるコピー機「タダコピ」を設置するなどしている。
NUMOの調べに対し、同社は、埼玉会場では謝礼を約束して学生を集め、他の会場ではサークルに物品などの提供を持ちかけ、参加を呼びかけたことを認めた。発言内容に対する依頼はなかったとしている。
NUMOの宮沢宏之理事は「謝礼を支払う形の募集はしないと委託先にも周知していたが、徹底できていなかった。深くおわびし、委託先の見直しを検討する」と謝罪した。