72時間ホンネテレビに出演した(左から)香取慎吾、稲垣吾郎、草彅剛 (C)AbemaTV
国民的アイドルと言われたSMAPの解散から11カ月。メンバーだった3人による「72時間ホンネテレビ」は、大きな反響を呼んだ。アイドル評論家の中森明夫さん(57)は、「革命」と位置づけ、社会に与える意味を読み解く。
日本のメディア史に残る画期的な出来事です。テレビとネット、芸能を含めた一つの大きな「革命」が起こった。ちょっと大げさに言えば、まさに「新しい地図」革命ですね。
まず、実感として、僕の周りでは見ていない人がいなかった。もちろん72時間ぶっ続けではないけど、ちらっと見た人も含めて。最終日の夜に行きつけの中野のパスタ屋さんに行ったら、他のお客さんもみんなスマホで番組を熱心に見ている。店員さんまでこっそりと。驚きました。スマホ時代の新しい体験だなと思った。知人の若いクリエーターたちの間でも、番組の話題で持ちきりでした。
成功の要因としてまず大きいのは、元SMAPの3人が出ずっぱりだったこと。SMAPはここ30年、平成という時代をリードしてきた国民的アイドルです。芸能界だけでなく世の中の空気を確実に変えた。「世界に一つだけの花」はもはや国民ソングで、ある世代以降、君が代の次に有名な歌になっている。
しかし、明確なメッセージを持つあの曲を歌っていたにもかかわらず、芸能界では言いたいことも言えなかったのではないか? 昨年1月の「公開処刑」とも呼ばれた(フジテレビ系番組「SMAP×SMAP」での)謝罪場面はひどかった。誰に何を謝ってるのかすらわからない。もし事務所サイドがやらせてるんだったら本当にひどい話です。大スターにあんな侮辱を加えて、誰もうれしくないでしょう。
解散コンサートもない、本人たちの記者会見もない形で、ぐずぐずで解散に至り終わってしまった。しかも、3人だけがジャニーズ事務所を出る。責めるつもりはありませんが、残る2人のコメントがほとんどなかったことも寂しい。
アイドルは、ファンのもの。例えば、いま無数にいるアイドルの中には、ライブの日に体調不良で声が出ないような子もいる。旧来の芸能界のプロの歌手としては失格と言われるでしょうが、それをファンが応援して逆に盛り上げるのがいまのアイドルのあり方です。アイドルはファンが作るもので、ファンに主権がある。ジャニーズにはある意味でそういうファンを育ててきた大きな功績があります。それだけにSMAPの件は本当に残念ですね。
ジャニーズ事務所というのは今や芸能界の一大帝国でしょう。そんな巨大な存在である大手事務所やテレビ局を相手に、ファンはツイッターなどで一人一人が必死に声を上げて抵抗していました。涙ぐましいですよ。ファンの皆さんが自主的に新聞広告を打つなど画期的でした。ただ一連のSMAP解散をめぐる展開は、結果的にとてもフラストレーションの残るものだった。
そこに、9月の3人による共同のファンサイト「新しい地図」の発表がありました。動画のメッセージ、「逃げよう」「風通しよく行こう」。あれでパッと心が明るくなりましたよね。わくわくした。本当に応援したいという気持ちになった。新しい地図が発した最大のステートメント(声明)がこの72時間ホンネテレビでした。
本当に出演してくれる人がいる…