「希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会」が開いた待機児童問題を考えるイベントには、子育て中の親が多く参加した=10月4日、衆院議員会館
2020年度末の待機児童ゼロ達成に向け、政府が推計した保育施設「32万人分」の整備目標で十分なのか、議論が起きている。都市部を中心に依然保育園に入れない子どもが多いなか、幼児教育の無償化策に巨額の財源が投入される見通しとなったのが発端だ。保護者らは政府がそもそも潜在的な需要を見誤っているとし、「まずは正しいニーズ把握に基づく施設整備を」と求めている。
「どういう計算で政府は32万人と言っているのか。算定の根拠、計算式を示してください」。20日の衆院代表質問で希望の党の玉木雄一郎代表は、幼児教育の無償化に回すお金があるなら待機児童対策に使うべきだと主張した上で、安倍晋三首相にこうただした。
政府はこの目標をもとに保育施設の整備費や運営費の財源を確保し、整備を進めている。ただ、01年に小泉純一郎政権が「待機児童ゼロ作戦」を打ち出して以来、歴代政権の整備目標はことごとく需要を少なく見誤ってきた。13年の安倍政権の「解消加速化プラン」も含め、各市区町村が予測した需要を積み上げて目標を策定。それを上回る整備を進めてきたが、待機児童はまだ解消していない。
「32万人分」の目標は、今年6月に公表された新計画で登場した。新計画をつくったのは4月の全国の待機児童数の概要が明らかになり、政府目標の今年度末のゼロ達成が絶望的となったためだが、「時間的制約で市区町村の需要の積み上げはできなかった」(厚生労働省の担当者)という。
このため、女性の就業率の上昇に伴って上がる保育園の申込率を算出し、就学前人口の推計値をかけるというマクロ試算を初めて使った。16年に72・7%だった25~44歳の女性の就業率が「22年度末までに80%まで上昇する」と想定し、保育の利用申込率が5割を超えると見込んだとする。
新計画ではゼロ目標時期を20…