消費者保護のために米オバマ前政権下で設置された消費者・金融保護局(CFPB)の局長人事を巡り、トランプ政権と役所側が別々の人事を公表する異例の事態となっている。役所側は26日、政権側の提訴に踏み切っており、混乱は深まるばかりの状況だ。
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オバマ前政権下で指名されたCFPBのコードレイ局長は24日に辞表を公表し、暫定的な局長代理を担う副局長に、同局幹部のイングリッシュ氏を指名した。だが、トランプ氏はその直後、これとは別に、正式な局長が決まるまでの局長代理として、CFPBに批判的な行政管理予算局のマルバニー局長を指名。トランプ氏は「CFPBは完全な災難だった」とツイートした。
イングリッシュ氏は26日、「法律の設計と同局の独立性に反する」として、トランプ氏によるマルバニー氏の指名人事の差し止めを求める訴えを起こした。ロイター通信によると、与野党共にCFPBの局長を決める最終的な権限はトランプ氏にあると認めているが、暫定的な局長人事を巡り意見が割れている。
CFPBは金融危機後、オバマ前政権が作った「金融規制強化法(ドッド・フランク法)」の目玉として新設。昨年には、米大手銀行ウェルズ・ファーゴが顧客に無断で口座を開設するなどの不正営業をしていたとして1億ドル(約111億円)の罰金を科すなど、金融機関の監視を強めていた。だが、金融規制の見直しを進めるトランプ政権は、「金融機関が打撃を受けている」などとしてCFPBの改革を検討している。(ワシントン=五十嵐大介)