政治にかかわるお金の出入りを記載した政治資金収支報告書について、今年から5県の選挙管理委員会がインターネットで公開することを決めた。2016年分の収支報告書は30日までに総務省や全国の選管で公開されるが、ネットで公開されるのは計32都府県選管となり、特定の場所での閲覧に限られる残りの15道府県選管との格差が生まれている。
政治資金収支報告書は、政治家や政治団体の活動にまつわる収入や支出を詳しく記載したもの。政治資金規正法に基づき作成され、誰でも政治とカネのチェックができるよう、総務省や各都道府県の選管から公開されている。
総務省は04年から収支報告書のネット公開を始め、各選管にも導入を呼びかけている。16年分の収支報告書が出そろう30日までの公開状況を朝日新聞が調べたところ、インターネットで収支報告書が見られるのは昨年から5カ所増え、32都府県選管となっていた。
福島県選管は6月以降、ほぼ職員1人で約800団体分の作業を進めてネット公開にこぎ着けた。担当者は「これまでは公開後に100件以上の開示請求があり、その都度コピーや手数料徴収に追われていた。それを考えれば、年間を通した事務作業は激減すると思う」と話す。約30万円で電子データ化を外部委託したほかは1人で作業した島根県選管の担当者も、「やってみるとそんなに手間でもなかった」と振り返る。
静岡県選管も今年、県のホームページ更新に伴いサーバー容量が増えたことでネット公開に切り替えた。衆院総選挙があった10月は選挙管理の業務が増えたが、職員の手が回らない部分は約100万円で外部業者に委託して全約1300団体分をデータ化した。
一方、ネット公開をしていない15道府県選管(一部公開も含む)では公開場所での閲覧が必要だ。
北海道選管では、本庁と14振興局に分かれて保管され、来庁しないと見ることができない。遠隔地からでもファクスやメールで開示請求すれば写しを受け取れるが、1枚10円のコピー代や送付料金、交付まで約2週間の期間がかかる。担当者は「ネットにつなげれば無料で見られる選管と比べれば、住民へのサービスや透明性が劣っているのは間違いない」と認める。
ネット非公開の選管の多くは「人員不足」や「サーバー容量が心配」を理由に挙げるが、どれぐらい足りないかを調べて検討したケースはわずかだった。政治資金に詳しい駒沢大の富崎隆教授は「極めて残念な対応だ。法律の趣旨から言えば、誰もがアクセスしやすいネット公開にするのが当然だ。できないのなら、具体的な説明責任が問われる」と話す。(滝口信之、坂東慎一郎、矢島大輔)
ネット公開していない選管
北海道、茨城、山梨、新潟、石川、福井、京都、兵庫、広島、山口、愛媛、高知、福岡、長野(国会議員のみ公開)、滋賀(同)