廃炉に向けた作業が続く東京電力福島第一原発。敷地内には汚染水のタンクが並ぶ=11日午前、福島県大熊町、朝日新聞社ヘリから、仙波理撮影
東京電力福島第一原発の汚染水対策の「切り札」として、東電と国が建設した凍土壁。345億円の国費が投じられた。ほとんどの地点が凍ったとみられるが、大雨が降ると建屋に流れ込む地下水が急増するなど、頼りなさが露呈。最大の目標である地下水の抑制効果は、期待されたほど上がっていない。放射能の強い高濃度汚染水がたまっている限り、外部に漏れ出す恐れが残るだけでなく、本格的な廃炉作業に入れない状態が続くことになる。(川原千夏子、東山正宜)
「最終凍結を始めて以降、地中の温度は0度以下になってきている。だが、評価については時間をかけてゆっくりと精査する」
凍土壁を全面凍結する作業が始まって3カ月になった11月22日。東電の定例会見で、その効果について質問を受けた広報担当者の回答は歯切れが悪かった。
凍土壁は、福島第一原発の1~4号機の原子炉建屋やタービン建屋などの地下に地下水が流れ込むのを抑えるため、建屋をぐるりと囲むように地中に作る「氷の壁」だ。凍結管をおよそ1メートルおきに約30メートルの深さまで打ち込み、マイナス30度の液体を流して周囲の土を凍らせる。全面的に凍結すれば総延長は約1500メートルに及び、山側から海に向かって流れる地下水を、建屋の手前でダムのようにせき止める効果を狙う。
工事は2014年に始まった。段階的に凍結が進み、16年に建屋の海側の列で地下の温度が0度以下になった。凍結する部分を山側に広げていき、今年8月22日に残っていた最後の7メートルの凍結が始まった。
東電によると地中の温度は順調に下がり、2カ月ほどでほとんどの地点が0度以下になった。建屋に流れ込む地下水の量は昨年初めに1日当たり推定190トンだったのが、今年10月前半には110トンまで減少。目標としていた「100トン以下」が近づき、建屋の地下にたまって作業を妨げている高濃度汚染水の除去に道筋が開けたかに見えた。
台風、地下水が大量流入
だが、10月下旬に台風21、22号が大雨を降らすと状況は一変。地下水位が急上昇し、建屋にも大量の地下水が流れ込んだとみられる。結局、10月の1カ月間の平均の流入量は1日あたり310トンと推定される。一連の汚染水対策を始める前の400トンに迫る量だ。
雨が少ない時期は流入の抑制効…