渡辺明竜王(左)に勝ち、永世七冠を達成した羽生善治棋聖=5日午後4時58分、鹿児島県指宿市、堀英治撮影
将棋界の第一人者が、史上初の七冠制覇から20年余り、前人未到の偉業をまた歴史に刻んだ。一つ獲得するだけでも超一流の証しである「永世称号」を七つ全てそろえた。今年はタイトルを相次いで失うなど苦しい場面もあったが、さらなる「進化」を印象づけた。
【特集】「永世七冠」羽生善治 前人未到の偉業刻む
将棋の羽生棋聖、史上初の「永世七冠」 渡辺竜王破る
「負けました」。午後4時23分、渡辺明竜王(33)が頭を下げた。報道陣の熱気に包まれた対局室で、羽生善治棋聖(47)は取材に「シリーズが終わってホッとした。(偉業達成の)実感はまだない」と落ち着いた様子で話した。
羽生棋聖は2008年と10年、永世竜王の資格(連続5期か通算7期獲得)をかけた戦いで渡辺竜王に敗れた。3度目の挑戦となった今回の七番勝負。持ち味である緩急自在の指し手に加え、「思い切った手を指せた」との言葉通り、積極的な攻めの姿勢が光った。第2局では中盤、意表を突く場所に持ち駒の桂馬を打ち、前例の少ない過激な攻めを成功させ、解説の棋士たちをアッと言わせた。
羽生棋聖は元々、攻めが得意だが、「さらに将棋がアグレッシブになっている」と語るのは村山慈明(やすあき)七段(33)。普段、一緒に練習対局を重ねている。「第2局のようなパーフェクトゲームをやられたら、誰も勝てない」
将棋の戦術は、トップ棋士を圧倒するまでになった将棋ソフトの進化でこの5年ほどの間に大きく変わった。従来は「無謀」と思われていた攻め方がソフトの指し手で効果的とみなされ、最近は先攻を狙う将棋が目立つ。
ネットの活用で、他の棋士たち…