研修でボッチャを経験するCACクロアの社員たち
社員たちが和気あいあいとボッチャに興じている。
5日。医薬品開発支援のCACクロアで、コミュニケーション活性化を目的として行われた社内研修の一こまである。
ボッチャはパラリンピックの正式競技。球を転がしたり相手チームの球に当てたりして、的の球に近づけることを競う。2016年リオデジャネイロ大会のチーム(脳性まひ)で日本が銀メダルを獲得し、認知度が上がった。
この障害者スポーツを、同社は社会貢献のCSR活動の一環として、社員がボランティアで大会運営や審判を務める形などで人的支援をし、普及にも努めている。運動が苦手な人も楽しめ、戦略性が高く、仲間と作戦を立てられるこの競技がコミュニケーション促進に効果があると社員研修にも導入したのだ。
同社企画本部の平川成大さんは「CSR活動は、社員には『お金を使うだけ』に見えることがある。だから、社員にボッチャを自分事にしてもらうことで、真の意味でCSRの責任を果たすことにもつながる。そして、会社が支援しているボッチャの普及も図れる」と、研修に取り入れることで、さらなる効果があると説明した。
自分事化。
先月7日に朝日新聞社が主催した、スポーツを通じた障害者と健常者の共生を考えるシンポジウムで、IT関連企業のワン・トゥー・テン・ホールディングスの沢辺芳明社長が語ったことを思い出す。
同社は、陸上競技の車いすレースのスピード感や面白さをバーチャルリアリティーで体験できる「サイバーウィル」や、テクノロジーを駆使してボッチャを視覚的、聴覚的にも楽しめる「サイバーボッチャ」を開発した。
「こうしたスポーツは対岸の出来事というか、障害者のものというイメージがすごく強い。一般の人がそれを自分事化し、日常シーンの中で楽しむ風景をつくり出せれば」
バイク事故で自らも車いす生活をする沢辺社長は、開発に込めた思いをそう話した。
「サイバーボッチャがバーやゲームセンターなど、普通にデートで行けるようなところに置ければいい」
えたいの知れないものから、自らも楽しめるものへ。スポーツを通じた障害者と健常者との共生へ、キーとなる概念の一つになるだろう。(編集委員・中小路徹)