畑でくわを手にする秋山さん=三重県大台町
日本人初の宇宙飛行士で元TBS記者の秋山豊寛さん(75)が、三重県中部に移り住んで農業を営んでいる。50代で退職後に福島でシイタケ農家になったが、原発事故が起きた。避難生活を経て、「日本一の清流」と名高い宮川のほとりで再び畑を耕している。
特集:もっと!ロケット
大根、ネギ、ジャガイモ……。秋山さん方の軒先にある300平方メートル余の畑で、冬支度が進む。移住して初めての春と夏が過ぎ、「どんな地面かようやく分かってきた」。水が豊富な土地で、粘土質が少ない畑はウリとスイカがよくできた。悩みはサル、シカ、イノシシ。庭先の栗も、サルがイガをむいて食べていった。畑に古い漁網を張って防ぐ。「これから土づくりをやっていこうと思う。ベニバナ栽培もやってみよう」
秋山さんはTBSでワシントン支局長などを務め、1990年12月、特派員としてソ連(当時)の宇宙ステーション・ミールに滞在した。宇宙から美しい地表を眺めて「地球を壊さない暮らしをしたい」との思いを強くした。
53歳で退職して福島県に移住し、無農薬のシイタケ栽培を始めた。だが、2011年、約30キロ先の福島第一原発で事故が起き、避難先を転々とする生活を余儀なくされた。
請われて同年秋から京都造形芸術大の教授となり、京都に移った。来春にはこの職を退く予定で「老後は放射能の危険のある所で暮らしたくない」と移住先を探した。
「日本列島は地震・火山の活動期。いつどこで原発事故が起きてもおかしくない」。安全な場所として「原発から遠い紀伊半島」に目をとめた。浜岡原発(静岡)は運転停止中で、一番近い原発がある若狭湾から150キロ離れている。
一昨年、清流・宮川で知られる…