ウーマンラッシュアワー村本大輔さん=東京都中央区、池永牧子撮影 17日夜にフジテレビ系で放送された「THE MANZAI」に出演したお笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の漫才が話題になっている。原発や基地問題など時事問題を採り入れた風刺性ある内容に、「やっとこういう芸人が出てきた」「漫才に政治観を出すな」と賛否両論が飛び交う。ネタを書いたのは、福井県おおい町出身の村本大輔さん(37)。20日、取材に応じ、この漫才に取り組んだ理由や、反響から感じることを語った。 ――狙いは何だったんでしょうか。 ニュース番組を(ネットテレビ局の)AbemaTVで始めさせてもらって、被災地に行かしてもらったり、沖縄の基地の話を聞いたりするんですよ。 沖縄とかが僕のニューストピックになって、いつも通りツイッターで紹介するわけですよ。「パンケーキ食べた」とか「芸能人に会った」とかの時は、「いいね」とか「リツイート」がぶわ~っと押されて、コメントが来るのに、沖縄とか原発とかいった時には、無反応になったんですよね。あれっ、て思って。スルー(無視)されていくことに疑問があるわけですよ。 僕は芸人ですから、言いたいことをネタにするのが僕のお笑いなわけですよ。THE MANZAIのネタは、ぱっとつくったわけじゃない。この半年くらいずっと、自分の得た情報を取り込んで笑いにしたい、これが俺の見たいものだと思って、つくり続けてきたわけですよ。 これを舞台とかでもやったら、周りの芸人に「芸人ちゃうやん」「政治家やん」「何あれ?演説~」とか言われるんですよ。芸人はそういう目で見るんですよ、異質なものだから。自分の見たいものをやっていくと、村本の笑いってアメリカっぽいねと言われるんですよ。ジョージ・カーリン(米国のコメディアン)をYouTubeで見て、衝撃を受けました。宗教とか経済とかに言及して、拍手を起こすんですよ。 「それを日本でやっても意味ない、受け入れられない」という話もあるけど、違うんですよ。それはみんなが日本という国をしっかり見てないからで、日本でもすっげえ笑ってくれる所がある。それは沖縄であったり、原発の街であったり、東北、熊本の被災地であったり。 ――そういう経験があったのですか。 沖縄で公演をやった時に拍手が止まらなくなったんですよ。沖縄の基地についての「ようこそ沖縄へ」というネタ。終わった後に帰ろうとしたら、音響のおっちゃんが僕の後追っかけてきて、涙をためてね、「ありがとうね」と言ってくれたんですよ。「本当にうれしい」って。(熊本県)益城町の仮設テントでの無料漫才でも拍手が止まらなかった。「忘れないでほしい」ってみんな言うんですよ。沖縄の人も同じで、「無視されるのが一番つらい」と言うんですよ。 どっかの番組に出た時に、「原発無いとやってけない町が悪い」とか言われたんですよ。この恩知らずが、と思うわけです。基地も原発も、その町が手を挙げようと、挙げまいと、日本全体の置き場所になってるわけだから。ルームシェアの一軒家で、フクイ君とオキナワ君に洗濯機とか置かせてもらって使っているわけやから。当たり前に使っていながら、「洗濯機お前の部屋に置いてるから」じゃないですよ。 ただ、日本で政治的なネタで笑いをとるのは難しい。日本は、問題提起をする際に、子供でも笑うようなプロット(筋)の中に落とし込んでいかないといけないから。日本の舌にあうように。(THE MANZAIでのネタも)「ようこそ、どこどこへ」というキャッチーなワードを入れることで、分かりやすい料理をして、初めて口に入れるんですよ。 ――17日の夕方に都内であった「ウーマンラッシュアワー村本の大大大演説」で、その夜のTHE MANZAIのネタについて、「カットされたらフジのネタ番組にはもう出ない」と言っていましたね。こういうネタがテレビで流れにくいと考えるのは、どうしてですか。 テレビは、主義主張をスタジオに持ち込んじゃいけないテーマパークで、芸能人という着ぐるみを着たマスコットばかりがいる偶像の世界ですから。テレビの中に真実や大事なことを求めるのは違いますよ。あそこが国会だと思って見ようとするから、「テレビがおかしくなった!」って言うんです。(視聴者を)置いていってでもついてこさせるんじゃなくて、後をずっとついていってるから。 このネタは議論を起こしてますけど、「芸人としてどう」「エンターテインメントとしてどう」とか、表面上の話ばかりしたがって本質的な話をしようとしない。難しいものに立ち向かう勇気がないんですよ。「あんなこと言ってたけど、そうなのかな」って、きっかけにすればいいじゃないですか。みんなで議論しちゃえばいいじゃないか。 ――反響はまだ続いていますね。 THE MANZAIで優勝した時(2013年)もこんなに語られることはなかった。何組もやった中で、たった5分をみんながあーだこーだと議論している。これが、僕が、なるんだろうなと思っていたことです。 ツイッターのフォロワーが2万人くらいワッと増えたんです。新聞記者や政治家、大学教授とか。東大の講堂で独演会をやってくれとオファーがあった。中卒の芸人が、安田講堂でやるっていうのは面白いなと思った。今までの層とは関係のない人たちが、痛快だと言ってコメントしてくるんですよ。お父さんが同僚や娘に見せたり、反響で見たり、笑いに興味のなかった層にささっている。 ――「左派」と呼ばれるような人たちの支持を特に得た感じがありますが。 僕は沖縄の基地、賛成も反対も言ってない。考えようと言ってるのに、「村本は沖縄の基地を無くしたいと言っている」「すばらしい村本」とか。僕は言いたいんだけど、「よく言った!」じゃなくて、お前が言え。お前もこの世界で生きているんだから、何か響くものをつくって言えよ、隣の人に言っていけよ。「リベラルが村本にハシゴを外されてる」って言うこいつも僕のことを利用しているし。右も左もなくて、相手を尊重しつつ、自分の考えを発言していけばいい。 ――村本さんがつらいのは、自由にしゃべれなくなることでしょうか。 本当にそうです。テレビがなくなって、ラジオもネットもなくなっても、口と頭はあるわけですよ。常に自由ですよ。誰にも制限されることはないわけですからね。言いたいことを言うだけですよね。それを伝えるのに、エンターテインメントですよね。(聞き手・湊彬子) |
ウーマン村本のエンタメ論 あの政治風刺ネタを語り倒す
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