女子50キロ級準決勝、入江ゆき(右)は須崎優衣を攻める=竹花徹朗撮影
一度しか勝っていないのに、日本一――。東京・駒沢体育館であったレスリングの全日本選手権最終日の23日、こんな珍事があった。
女子62キロ級にエントリーしていたのは、昨年のリオデジャネイロ五輪63キロ級金メダリスト、川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)を含めて7選手。第1シードの川井はこの日の準決勝が初戦のはずだった。が、前日の準々決勝を勝ち上がった選手が負傷により棄権。決勝では実力通り3分47秒でテクニカルフォール勝ち。たった一度の勝利で、この大会通算3度目の優勝を果たした。
全日本選手権には、大学や高校の王者や国体の上位者など、実績がある選手しか出られない。競技人口が少ない女子ではどの大会でも上位の選手は大きくは変わらず、出場資格がある選手が少ない上、実力者のいる階級は避けられる傾向がある。
さらに今大会からは、国際ルールの変更で階級区分が変わり、各スタイルともこれまでの8階級から10階級に増えたことで、選手層が「薄く、広く」なりがちだった。女子の68キロ級と72キロ級は出場4人で、3位決定戦はないため全員が表彰台に上がった。
川井は「1試合だけなので、やりきった感はない」。女子68キロ級で2試合をテクニカルフォールとフォールで圧倒して優勝したリオ五輪69キロ級金メダルの土性沙羅(東新住建)は「人数が少ないので、もう少し試合をしたい気もする」と、物足りなさそうだった。
日本レスリング協会の栄和人強化本部長は大会後、「人数が少ないのはどうしようかと思った。強化のため、(10階級中6階級の)五輪階級だけで競わせるという考えも持っている」と話していた。(菅沼遼)