祐生さん(右)と勇介さんの結婚パーティー(2016年、気仙沼市、本人提供)
宮城・気仙沼からゾウの鼻みたいに突き出た唐桑半島。約6千人が漁業を中心に暮らしている。ここに今、若い女性がどんどん移住してきている。なぜ唐桑に?
根岸えま(26)は普通の東京の女子大生だった。つけまつ毛にブランドのバッグでおしゃれして、早起きしてバイトしたり、夜は友達と飲み明かしたり。大学1年の時、震災があった。「町が一つなくなるってどういうこと?」。好奇心で申し込んだボランティアで、唐桑に行くことになった。
――あれ、なんか思ってたのと違う。
人も建物も流されたところなのに、ここにいる人たちは、なぜか底抜けに明るい。「お疲れー!」と笑顔でボランティアを世話する旅館のおかみや、また海に向かう漁師。「この町のこと、もっと知りたい」。毎週のように唐桑に通った。
ボランティアの拠点で、「ホーム」と名付けたプレハブには、毎晩若者が集まった。マンガの話で盛り上がったり、時には熱く夢を語ったり。翌年には大学を休学し、唐桑で仲間たちとまち歩きのイベントなどを企画するようになった。
初めて何かに夢中になれた。東京では周りから浮かないことばかり気にしてた。ここでは、等身大の自分でいられる。ブランド服よりも、「地元のばあちゃんが縫ってくれたもんぺの方がずっと大切」と思えるようになった。
唐桑に移住して、立ち上げたま…