イラン各地で先月末から抗議デモが拡大し、死者が出ている問題で、国連安全保障理事会は5日午後(日本時間6日早朝)、米国の要請で緊急会合を開いた。犠牲者が出ていることに遺憾の意が多く表明されたものの、イランと敵対する米国が安保理の議題にした意図を疑う批判も出た。
デモが本格的な紛争に発展する可能性があると訴える米国のヘイリー国連大使は「抑圧的な(イラン)政府にうんざりした勇気ある人々」とデモ参加者をたたえた上で、「イラン政府に警告する。あなた方の行動を世界が見ている」と述べた。政府による人権軽視や情報統制も批判した。
一方、フランスのデラットル国連大使は今回の出来事への懸念を示しながらも「それ自体は国際社会の平和と安全への脅威ではない」と述べ、米国と異なる立場を示した。仏は、イランが2015年に米欧などと結んだ核合意を順守する立場で、合意離脱を示唆するトランプ政権への懸念を深めている。
ロシアのネベンジャ国連大使は「米国の理屈に従えば、安保理は(14年に警官の黒人射殺を機に抗議デモが激化した)ファーガソンや米ウォール街のオキュパイ運動でも会合を開くべきだった」と批判。米国の真の狙いは、核合意を「揺るがすことだ」と述べた。
中国やボリビアも安保理が内政を扱うべきではないとの立場を示した。国連憲章は安保理に「国際平和と安全の維持に関する主要な責任」を負わせている。(ニューヨーク=金成隆一)