米テキサス州オースティンの「落書き公園」=加藤丈朗撮影
だれでも好きなだけ壁に絵を描いていい、ストリートアーティストにとっては夢のような場所が米テキサス州オースティンにある。自由気ままに描く人たちを見に、世界中から見物客が集まり、休日になると交通渋滞ができるほどの人気だ。迷惑がられる「グラフィティ」が、ここでは立派なアート。それが「落書き公園」だ。
様々な高さの壁が立ち並ぶ丘で、小さな子どもから著名なアーティストまでが、せっせと壁の絵に取り組んでいる。音楽をかけながらブラシを動かす人、壁に掛けたはしごに登って最後の仕上げにかかる人。見物人とおしゃべりに興じる人。だれもが自由なアーティストだ。
この場所を管理するNGO「HOPE」のプロジェクトマネジャー、マイルス・スターキーさんによると、「落書き公園」の始まりは2011年にさかのぼる。
この斜面の上に土地を持つビクター・アヤドさんは、「落書き公園」がある約2万8千平方メートルの敷地にコンドミニアムを建てようとしていた。ところが08年のリーマン・ショックで、計画は頓挫。建築中だった土台や壁がとり残された。すると、放置された現場に不法に立ち入り、壁に落書きをする人たちが絶えなくなった。
この状況を逆手に取ることを思いついたのが、アーティストのアンディ・チェーサムさんだった。「だれでも自由に絵を描けるアートの場所にしたらどうか」とアヤドさんに提案した。この案を気に入ったアヤドさんが土地を無料で開放した。当初は半年ほどの期間限定だったはずが、大人気に。11年からはHOPEがこの土地を管理している。
絵を描きたい人は、HOPEに申請すれば場所を与えてもらえる。もっとも、飛び入り参加するケースもあり、平均して1日に2~10人くらいが絵を描きにやって来るという。早いと2日ほどで、別の絵に塗り替えられるという。
「ルールは、人の絵を尊重するため、いったん白く塗ってから描くこと。でも、他の人の絵に別の絵をちょっと加えて素晴らしい作品を作るアーティストもいる。政治的なメッセージを込める人もいる」とスターキーさん。他の人の作品に敬意を払えば、基本的に何を描いても自由だ。
「世の中には才能があるのに名…