イラン各地に拡大した抗議デモは、改革を進める保守穏健派のロハニ政権と既得権益を維持したい保守強硬派の対立が引き金になったとの見方が出ている。先月28日に最初のデモがあった北東部マシュハドは保守強硬派の牙城(がじょう)。このデモが市民の間に長年くすぶっていた経済不況や体制への不満に火を付けた模様だ。
イランのデモ死者20人超す 治安当局、強硬姿勢も
「もう待てない。いつになったら経済が良くなるんだ」。デモに参加した、テヘランの不動産関連の会社に勤める男性(47)はそう訴えた。100万円以上の借金を抱え、物価高と、下がる給料という二重苦の生活を送っているという。
男性は「自分を含めイラン人の心の奥底には体制への不満がずっとあった。最初に起きたデモの情報をネットで目にしたことで、それがガソリンのように心の中の小さな火を燃えさからせたんだ」とマシュハドのデモが人々を駆り立てたと説明した。
イランの政治経済評論家のサイード・レイラズ氏は「ロハニ大統領は保守強硬派の利権を切り崩すため、金融改革などを行ってきた。それをよく思わないのが、マシュハドを支持基盤とする保守強硬派のグループだ」と指摘。マシュハドのデモは保守強硬派が関与した可能性があるとの見解を示した。
国営テレビによると、一連のデモで少なくとも参加者21人と精鋭部隊の革命防衛隊の隊員1人が死亡した。デモは当初、物価高や政府への抗議がスローガンだったが、タブー視されている最高指導者ハメネイ師への批判にエスカレートした。テヘランでのデモに3日連続で参加したという無職のニマさん(24)は「ロハニ師もハメネイ師も同じ。結局庶民に何もしてくれない」と語った。(テヘラン=杉崎慎弥)