会見する青野慶久さん(左)と作花知志弁護士=東京・霞が関の司法記者クラブ
夫婦別姓を選べる法制度がないのは法の下の平等を保障した憲法に違反しているとして、結婚で妻の姓となった男性ら4人が9日、国を相手取り、計220万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。原告側の弁護士によると、選択的夫婦別姓を求めて法律婚した男性が提訴するのは初めてという。
訴えたのはソフトウェア会社「サイボウズ」(東京)の青野慶久社長(46)と関東地方の20代の男女3人。
訴状によると、青野さんら2人は結婚で姓が変わり、所有株式の名義の書き換えで多額の手数料がかかったり、仕事上旧姓と使い分けざるを得なかったりしたと主張している。他の2人は事実婚で、女性の姓が珍しく双方とも姓の変更を望まず、事実婚を選んだという。
夫婦別姓を巡っては、最高裁が2015年、夫婦同姓を定めた民法の規定は「合憲」と判断。その理由として「夫婦同姓は社会に定着した制度で、家族の姓を一つに定めることには合理性がある」と説明した。今回の訴訟では、原告側は民法ではなく戸籍法に着目。日本人と外国人の結婚の際には夫婦で別の姓を選べるのに、日本人同士の結婚だけ別の姓を選べないのは憲法違反だと訴え、立法措置をとらずに放置した国の違法性を問うている。
青野さんは「姓を変えざるを得ず苦しんだ人たちの数十年間の思いが積み上がり、今回の提訴につながった。訴訟については、インターネットでも大きな反響がある。世論を形作る動きに広げたい」と話した。原告側代理人の作花知志(さっかともし)弁護士は「苦労している方は色々なところにいる。15年の最高裁とは違った切り口で、大きなうねりを作りたい」としている。
法務省民事局は「訴状が届いておらず、現段階ではコメントできない」としている。(後藤遼太)