2016年W杯長野大会女子500メートルで優勝した小平奈緒(右)と2位になった李相花=白井伸洋撮影
3回目の五輪で日本女子スピードスケート史上初の頂点を狙う小平奈緒(相沢病院)と、地元開催で3連覇を狙う李相花(韓)が、金メダルをかけて女子500メートルで激突する。31歳の小平はここ2シーズンは全勝と圧倒的に優位に立つが、実績に勝る28歳の李は本番での一発勝負にかける。
小平は今季、李と最終組で6度同走し、全勝した。五輪前最後となった昨年12月のワールドカップ(W杯)第4戦米ソルトレークシティー大会では1回目で0秒21差、2回目はさらに0秒25差に広げて、出場した500メートルでの昨季からの連勝を15に伸ばした。
小平の強さの一つは、スタートダッシュにある。2回目のレースの公式映像を見ると、最初の100メートルを自己最速の10秒14で通過した小平に対し、李は10秒29。第1カーブの入り口で小平は時速47・1キロ、李は時速46・6キロと、この時点で0・5キロ差がついた。
最高速に近い最終カーブ手前を比較すると、ともに時速55・9キロ。だが、最後の直線は時速54・5キロに落ちた李に対し、小平は時速54・6キロと0・1キロ上回った。この差が、終盤の伸びにつながっている。
ただ、李も調子は上向き。小平は2010年バンクーバー五輪12位、14年ソチ五輪5位だったが、李は五輪2連覇中と大舞台で強さを発揮。13年に36秒36の世界記録を樹立した時の100メートルは10秒09で、小平よりも0秒05速い。本来の爆発力を発揮できれば、3度目の頂点も見えてくる。
李は14年ソチ五輪で「私の競技人生は終わっていた」。だが、地元開催の五輪に気持ちが動いた。近年はひざの痛みに苦しんできたが、今季はカナダでトレーニングを積み、下半身の筋力は戻りつつある。
小平は李について「蹴落として上にいくライバルという感じではなく、自分を高めてくれる、動きが磨かれる存在」と話す。一方の李は「意識はしていない。自分の調子が悪い昨季も、そこまで速いとは感じていなかった」と強気を貫く。
決戦は2月18日。30歳を超えて連勝街道を走る遅咲きの小平が3連覇を食い止めるのか。それとも地元の大声援を背に、20歳で五輪の頂点に立った早熟の李が勝負強さを見せるのか。(榊原一生)
〈こだいら・なお〉 1986年生まれ、長野県出身。信州大出。バンクーバー五輪団体追い抜きで銀メダルを獲得。500メートルはソチ五輪の5位が最高。相沢病院所属。
〈イ・サンファ〉 1989年生まれ、韓国体育大出。20歳で出場したバンクーバー五輪500メートルで優勝し、ソチ五輪で2連覇達成。同種目36秒36の世界記録保持者。