イラワジ川でマウンレイさん(左)とコミュニケーションを取りながら魚を追い込むイラワジイルカ(中央)=昨年12月1日、ミャンマー中部マンダレー郊外、杉本康弘撮影
船上の漁師と水中の野生イルカが、コミュニケーションを取りながら魚をとる――。そんな伝統漁法が、ミャンマー中央部を南北に流れるイラワジ川には息づく。だが水質の悪化や近代的な漁法の普及のあおりを受け、イルカも減少した。危機に直面している昔ながらの漁法を残そうと、政府や地元の人は、環境保護や漁師の育成に乗り出している。(インダウン村=染田屋竜太)
「クルックルッ」
長さ3メートル、幅1メートルほどの小舟のへさきに座ったマウンレイさん(54)が、口をすぼめてイルカの鳴き声をまねた。15センチほどの木の棒で舟のへりをコツコツとたたく。20秒ほど後、灰色のイルカの尾びれがばしゃんと水面をはじいた。マウンレイさんはすぐに直径約5メートルの網を川に投じた。
ミャンマー第2の都市マンダレー中心部からイラワジ川を50キロほど上ったインダウン村に住むマウンレイさん。30年以上、この漁を続ける。「イルカが魚を舟の近くに追い込むと、尾びれで知らせてくれる。それを合図に網を投げる」。イルカは網にかからなかった「おこぼれ」にあずかるという。文字どおりの「協働」作業だ。
この地域で100年以上続く漁…