昨年10月、米議会上院の公聴会で、2016年の米大統領選の際にソーシャルメディアの広告枠をロシアが買っていた疑惑が取り上げられた。「ハート・オブ・テキサス」というグループが「退役軍人の69%がヒラリー・クリントン氏に反対している」と訴える政治広告はフェイスブックに掲載されたが、16日に公表された起訴状によると、ロシア人の被告らが作ったものだという=ワシントン、香取啓介撮影
2016年の米大統領選で、ロシアによる介入の実態が見えてきた。マラー米特別検察官は16日、ロシア国籍の13人と関連企業3社を初めて起訴。フェイク(偽)ニュースの「温床」になったとして批判の矢面に立つフェイスブック(FB)社やツイッター社は、負のイメージを払拭(ふっしょく)しようと必死だ。
「米大統領選の少し前から、ほとんど使われていなかった約1千のツイッターのアカウントが、突然動き始めた」。ロシアによる選挙戦への介入を調べてきたジョージワシントン大大学院のマシュー・ハインドマン准教授(インターネット政治学)はそう話す。
突如動き始めたアカウントは、長年使われずに放置されていた個人のものが多い。13年に米ヤフーから大規模な個人情報の漏洩(ろうえい)が起きた際に流出したアカウントもあったとみられる。「新しいアカウントを急に大量に作れば怪しまれる。使われていない個人の古いアカウントを乗っ取るなど、時間をかけて仕込んだことがうかがわれる」
ハインドマン准教授は、「ロシア側は特定のメッセージを送ったり、一つの問題に焦点を当てたりするより、世論の関心や争点をずらすことにたけていた」と指摘する。フェイクニュースを流すことで、それまで争点になっていなかった問題が急に有権者の関心事となったという。
米調査会社によると、米国人の大人の67%がソーシャルメディアから何らかのニュースを得ている。「テレビや新聞を見なくなった米国人が、本当に何が起きているのか知らぬまま、ネットの情報をうのみにしてしまった結果だった」とハインドマン准教授はみる。
一方、ロシアがどれだけソーシ…