インタビューに応じる岩下直行・京都大教授
仮想通貨交換業者「コインチェック」は21日、同社での仮想通貨の不正流出後、顧客らに不審な連絡が相次いでいることを明らかにした。同社を装ったメールや電話などで送金などを求めるケースがあるという。同社は詐欺の可能性が高いとして、連絡には応じずに警察に相談するよう呼びかけている。実際の被害は確認されていないという。
最近同社の関係者を装い「損失を補償する」「稼げる」などとして、日本円や仮想通貨を指定口座に送るよう求めるケースが相次いで報告された。会社のロゴを使ったメールや、偽のツイッターアカウントからのメッセージも確認された。
コインチェックでの大量の不正流出は先月下旬に発覚し、その後日本円の出金は再開されたが、仮想通貨の引き出しや、流出した仮想通貨NEM(ネム)の所有者への補償はまだ行われていない。
岩下直行・京都大教授
巨額の不正流出問題で、仮想通貨交換業者は世界のハッカーから狙われ、安全対策も不十分なことが明らかになった。多額のお金を預かる企業として、相応のシステムや顧客保護の仕組みを整える必要がある。
昨春施行の改正資金決済法では、仮想通貨を「支払い手段」とし、商品券のように何かを買う際に使われるモノと位置づけた。犯罪者のマネーロンダリング(資金洗浄)を防ぐため、交換業者に口座を開く際の本人確認も義務づけた。世界に先駆けた仕組みだ。
ところが今、仮想通貨でモノを買う人はほとんどおらず、投資対象になっている。「通貨」ではなく「資産」だ。日本人投資家が100万人を超え、月に何兆円もの取引がある。改正資金決済法を議論した時は想定しなかった事態だ。
今後の取引の安全確保や顧客保護のため、法改正で規制を強化することも考えられるが、時間がかかる。次善の策として、業界の自主規制や、第三者機関が安全性を保証するなどの仕組みが考えられる。顧客資産の信託管理などの仕組みも有効だろう。
今回は問題を起こしたコインチェックだけでなく、他の業者も信頼を失った。本当に信頼されるために何をすべきか、業界として考える良い教訓にしてほしい。(聞き手=真海喬生)