最終弁論を前に、福岡高裁前で集会を開く開門派の漁業者ら=福岡市中央区城内
諫早湾干拓(長崎県)の堤防排水門の開門を命じた確定判決をめぐり、開門を強制しないよう国が求めた訴訟の控訴審が26日、福岡高裁で結審し、西井和徒裁判長は改めて和解を勧告した。西井裁判長は判決期日を7月30日に指定して協議の期限を区切り、双方に早期の歩み寄りを促した。
開門を求める漁業者側と国の隔たりは大きく、高裁での和解協議は昨年5月にいったん打ち切られていた。開門派漁業者の弁護士や国によると、この日の最終弁論後に協議が再開。高裁は3月5日に協議の進め方について考えを示す方針という。和解が成立しなければ、期日通りに判決が言い渡される見通し。
国の代理人は最終弁論で、開門せずに有明海再生のための基金を設ける案を軸に和解協議を進める意向を示した。確定判決を履行していない国は1日あたり90万円の「罰金」(間接強制金)を漁業者側に支払っており、総額はこれまでに10億円を超えている。和解して漁業者側が開門要求を取り下げれば、支払い義務はなくなる。
だが、開門派の漁師の平方宣清さん(65)=佐賀県太良町=はこの日の意見陳述で「漁業者が望むのは開門による有明海の再生。基金案での和解はあり得ない」と訴えた。漁業者側は、開門によって生じるおそれがある干拓地の農業被害への対策を講じた上で、開門する和解を求めている。
和解協議は、干拓地の営農者らが国に開門差し止めを求めた長崎地裁の訴訟でも行われた。国は開門しない前提で、100億円規模の有明海再生基金案を示したが、国の補助参加人だった漁業者側は受け入れなかった。地裁は開門を禁じる判決を出し、国は控訴を見送って開門しない方針を明確にした。
高裁は26日、地裁判決前に漁業者側が申し立てた独立当事者参加の可否について、3月19日に決定を言い渡す方針も示した。(岩田智博、一條優太)