ビルの谷間にひっそりとたたずむ少彦名神社。毎月23日には、巫女がお湯をまいてお祈りする「献湯祭」がある=大阪市中央区、槌谷綾二撮影
「まだまだ勝手に関西遺産」
こぶのある怖い顔で草をくわえ、草で作った服を着た姿は、とてもワイルド。大阪の中心で出会った神さまは、実は中国生まれの医学と薬の神だそうです。その中国の神と、日本の神を共にまつる神社を訪ねました。
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その神さまに出会ったのは、製薬会社が軒を並べる大阪市中心部の「薬の町」、道修町(どしょうまち)(中央区)だった。ひっそりとビルに囲まれた神社の絵馬に描かれたのは、頭に角のようなこぶがあり、草で作られた服を着て、しかめ面に草をくわえた姿。思わず「ワイルドだぜぇ」とつぶやいてしまう。ちょっと古いけど。
この神さまの名は「神農(しんのう)」。中国の医学と薬の神だ。絵馬に神農とともに描かれた、髪を「みずら」にした「少彦名命(すくなひこなのみこと)」は日本の医薬神。神社の正式な名前は「少彦名(すくなひこな)神社」だが、町の人たちからは愛着をこめて「神農さん」と呼ばれる。
別所賢一宮司(45)が神社の沿革を説明してくれた。「1722年、江戸幕府が道修町に薬種(薬の原料)の仲買商を集めましたが、そのころには薬種商がそれぞれの家で神農をお祀(まつ)りしていました。1780年に京都の五條(ごじょう)天神(てんじん)社から少彦名命をお迎えし、会所(寄り合い所)で神農とともにお祀りしたのがこの神社の起源。日中の神さまを合祀(ごうし)した珍しい神社です」
この神農は、いつごろ日本に伝…