2001年に来日したスティーブン・ホーキング氏
「車椅子の物理学者」として知られる英国の宇宙物理学者スティーブン・ホーキング氏が死去したと、英BBCなどが14日報じた。76歳だった。宇宙の始まりなどについて先進的な理論を示し、現代宇宙論に大きな影響を与えた。体の自由が奪われる難病と向き合いながら、宇宙の魅力をわかりやすく伝え、著書「ホーキング、宇宙を語る」はベストセラーになった。
1942年生まれ。英オックスフォード大とケンブリッジ大大学院で物理学や宇宙論を専攻した。21歳で、体の筋肉が動きにくくなる難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」と診断され、以降は車椅子の生活を余儀なくされた。
20代で発表した「特異点定理」は、宇宙の始まりには一般相対論が破綻(はたん)する点があると指摘し、宇宙の成り立ちを理解するには相対論と量子論を融合させる必要があることを示した。その後も、巨大な重力でありとあらゆるものをのみ込むブラックホールも、エネルギーを放射できると予言して世界を驚かせた。
74年、最年少の32歳で英王立協会員に。79年には、万有引力のアイザック・ニュートンも務めた由緒あるケンブリッジ大のルーカス教授職に就いた。宇宙の魅力を分かりやすく伝える活動にも熱心で、88年に出版した「ホーキング、宇宙を語る」は世界で1千万部を超え、日本でも大きな話題になった。
私生活では23歳と53歳で結婚、3人の子どもに恵まれた。障害者の支援活動にも力を注ぎ、12年のロンドン・パラリンピック開会式では「好奇心を持ち続けよう」とエールを送った。晩年も、太陽系外への探査計画を発表したり、人工知能の悪用を防ぐ団体の顧問を務めたりと精力的に活動した。宇宙へ行く夢を抱き続け、「自由に宙に浮いたら、きっとすてきだろう」と語っていた。