休院したふるき産婦人科が使っていた建物=京都府京田辺市
無痛分娩(ぶんべん)時に適切な処置を怠ったため長女が重い障害を負ったとして、京都府京田辺市の夫婦が同市の「ふるき産婦人科」(昨年12月に休院)に約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、京都地裁であった。藤田昌宏(まさひろ)裁判長は担当した男性院長(56)の分娩の過程での過失を認めたが、そのために障害を負ったとはいいきれないとし、夫婦の訴えを棄却した。
判決によると、原告の女性(36)は2011年4月、麻酔で痛みを和らげる無痛分娩で、脊髄(せきずい)を保護する硬膜に細い管で麻酔薬を注入する「硬膜外麻酔」を受け、その後、陣痛を促す子宮収縮薬を投与された。その後、帝王切開で長女を出産したが、長女は脳性まひなどの重い障害を負い、14年12月に3歳で亡くなった。
夫婦側は、分娩監視装置を装着していなかったため、胎児の心拍低下を見落として低酸素脳症にさせ、帝王切開も遅れたと主張。一方、医院側は、監視装置は装着していたがデータが残っていないだけで、帝王切開の時期も適切だったと反論していた。
判決は、合理的な理由がなく多量の子宮収縮薬や高濃度の麻酔薬を投与し、分娩監視装置をつけたのは1度だけで再装着しなかったなどと院長の注意義務違反を認定した。一方、その過失が重い障害につながったとはいえないと判断した。
判決後、原告の女性は「納得いかない。控訴し、因果関係について争いたい」と代理人弁護士を通じてコメントした。
長女が脳性まひになった原因を分析した専門医らの委員会は「分娩中に低酸素症を発症し、陣痛促進や吸引分娩が影響した可能性も否定できない」とする報告書をまとめていた。
この医院をめぐっては、別の2家族が、無痛分娩や帝王切開の際の麻酔により母子が重い障害を負ったとして提訴し、京都地裁で審理が続いている。(徳永猛城)