ソウル中央地裁は22日夜、検察が求めた李明博(イミョンバク)容疑者(76)の逮捕状の発付を認めた。李氏は地裁が求めた審問出席を拒んだため、李氏から陳述を聞く審問を行わずに書類審査で結論を出した。検察はただちに逮捕状を執行するとみられる。
逮捕状の容疑は、収賄や背任、職権乱用罪など。大統領在任中、情報機関の国家情報院に領収書の要らない特別活動費を上納させたり、李氏が実質的な所有者と疑われる自動車部品会社を通じて多額の秘密資金を作ったりした疑い。
容疑は十数件に上り、検察関係者によると、李氏が受け取った賄賂は総額約110億ウォン(11億円)、秘密資金の総額は約350億ウォンに上るとしている。
韓国では昨年3月末、弾劾(だんがい)、罷免(ひめん)された朴槿恵(パククネ)前大統領が収賄容疑などで逮捕された。李氏が逮捕されれば、1年のうちに大統領経験者が2人も逮捕される事態になる。韓国では、1995年にも元大統領の盧泰愚氏と全斗煥氏が内乱罪や不正蓄財に問われて逮捕されている。
検察の捜査は「積弊(旧来の積み重なった弊害)清算」を掲げる文在寅(ムンジェイン)政権のもと、昨年10月に本格化した。調べでは、李氏は秘密資金づくりに使ったと疑われる自動車部品会社の投資資金の回収に国家機関を介入させたほか、同社の米国での訴訟費用約60億ウォン(6億円)をサムスン電子に負担させ、見返りに不正資金事件で背任罪が確定していた同社会長の李健熙(イゴンヒ)氏を特別赦免する便宜を図った疑いが持たれている。
李氏は14日の検察の任意の事情聴取に応じて容疑を否認したが、地裁は証拠隠滅の恐れがあるとの検察側の主張を受け入れ、逮捕の必要を認めた。
李氏は2008年~13年まで韓国大統領を務めた。(ソウル=武田肇)