2012年の明治神宮大会の京都学園大戦で力投する三重中京大時代の則本昂大
通算1千奪三振を達成した楽天・則本昂大の武器は何か。新人王をとった2013年のころと、1千奪三振を達成した今では、全く違うと思う。
楽天・則本昂大が1千奪三振 史上5番目のスピード記録
シーズン15勝をあげて新人王となり、楽天にとって初めての日本一に貢献した13年。イメージは「常に全力投球」だった。気迫にあふれる表情に加え、大きなフォームから適度に散らばる150キロ近い直球。「打席から見たら、絶対怖い」と思った。
田中将大が大リーグに挑戦し、楽天投手陣の柱となった14年。魅力だった荒々しさは、要所でしか見られなくなった。直球、スライダー、フォーク。決め球を、丁寧に両コーナーの低めに置いていった。ことあるごとに、「コントロールを磨いていきたい」と言っていた。もったいないと思っていた。
だが、数字は正直だった。
奪三振数は前年の134個から204個に大幅増。この年から、4年連続で200奪三振を達成し、最多奪三振のタイトルを獲得。投球イニングも1年目を下回ったことがない。直球を決め球にしたとき、空振り三振よりも見逃し三振が増えているような印象だ。
三重中京大でまだ無名だった時代を、監督だった中村好治さん(現・三重高総監督)が思い出す。「150キロのまっすぐがあっても打たれていた。変化球が入らんかったから。投球に幅を持たせないと。やっぱりコントロールって大事なんやなって」。制球力の大切さを説き、ドラフト2位でプロ入りするまでに育てた。この大学時代に受けた指導が、原点なのだろう。
日本を代表する右腕となった則本にとって、三振とは。「直接チームの勝ちにつながるかと言えば、そうではない」。ただ、「完璧な投球を手助けしてくれる武器。奪える喜びもあるし、一番リスクの少ないアウトの取り方ですから」と、投球のよりどころにしている。
昨季までのプロ5年間で991個の奪三振を積み上げ、今季はこの試合までに5個。いま、27歳。いつか体の衰えはやってくるし、球威も落ちてくる。それでも、則本には三振を奪える制球力がある。節目を越え、どれだけ三振を積み重ねていくのか楽しみだ。(小俣勇貴)