参院決算委で質問する自民党の西田昌司氏=9日午前9時12分、岩下毅撮影
森友学園との交渉に関する決裁文書の改ざんに、1年間存在が伏せられていた自衛隊イラク派遣時の日報。公文書を巡る二つの大きな問題が、9日午前に始まった参院決算委員会の焦点になった。「恥ずかしい」「うみを出し切る」。政府側は謝罪と釈明に追われた。
財務省、「口裏合わせ」依頼認める 森友学園国有地売却
【速報中】参院決算委員会のタイムライン
「森友学園側に事実と異なる説明を求めるという対応は、間違いなく誤った対応でございます。大変恥ずかしいことでございますし、大変申し訳ないことでございます」
9日の参院決算委。財務省の太田充理財局長はそう言って深々と頭を下げた。
太田氏が言及したのは、8億円超の値引きの根拠とされたごみの撤去費をめぐり、同省理財局の職員が昨年2月、「トラック何千台も使ってごみを撤去したと言ってほしい」と学園側に「口裏合わせ」を持ちかけたとのNHK報道だ。自民党の西田昌司議員の質問に対し、太田氏は事実関係を認めたうえで謝罪した。
これに対し、西田氏は「耳を疑うようなこと」とあきれた表情を見せ、こう声を張り上げた。「ばかか、本当に!」
続けて、西田氏が「印象操作するような答弁をすること自体、あり得ないんだよ」と語気を強める。太田氏が「申し訳ありませんとしか申し上げようがない」と再び頭を下げると、西田氏は「自分たちの都合のいいように情報は出すけれども、都合の悪いのは覆い隠してしまう」と批判したうえで、財務省の責任をこう強調した。
「一番の原因はこの役人のあり方なんです。組織の論理ではなくて国民目線に立った仕事をちゃんとやる。そういうことを総理から訓示を与えてしっかり指導していく必要がある」
午前11時ごろから質疑を始めた野党議員も、理財局職員による「口裏合わせ」報道に言及。事実関係の説明を求めると、太田氏は、職員が「ごみを撤去したと言ってほしい」と持ちかけたのは学園側の当時の弁護士だと認めた。
参院決算委は午後も続き、森友学園との国有地取引問題や財務省の公文書改ざんについて質疑が行われる見込みだ。(久保田一道、長谷文)
日報問題で首相「深くおわび」
「シビリアンコントロール(文民統制)にもかかわりかねない重大な問題。国民に深くおわび申し上げたい」。参院決算委の冒頭、自衛隊の日報問題に触れた自民党の西田昌司氏の質問に対し、安倍晋三首相はこう述べ、頭を下げた。
当時の稲田朋美防衛相からの口頭での「探索指示」がありながら、統合幕僚監部の官僚が防衛省・自衛隊全体に伝達していなかったことが明らかになった日報問題。西田氏が「国政に対する国民の信頼を失わせた。文民統制が機能しているのか」と指摘すると、安倍首相は「どこにこの問題の根源があるのかを明らかにし、情報公開、文書管理への取り組みの徹底を図る。シビリアンコントロールに対する疑念や不信感にもこたえられるよう全力で取り組む」と述べた。
この問題では、昨年3月に陸自内で存在を把握していたのに防衛相に報告されなかったこともわかった。 3番手に質問に立った自民党の滝沢求議員は「シビリアンコントロールが機能していないとの批判も当然では」と指摘すると、委員席から「そうだ」の声が響いた。報告が遅れた点について、防衛省の鈴木敦夫統合幕僚監部総括官が「すぐに大臣に一報すべきだった」と述べると、委員席から「当然だよ」とヤジが飛んだ。小野寺五典防衛相は「シビリアンコントロールに疑念を持たれても仕方がない。あってはならないことで、本当に陸自のみなのか、まずうみを出し切る」と述べた。
第三者による調査を行うべきだとの指摘に対し、小野寺防衛相は、「速やかに対応することがまず大切」と述べ、否定した。現在、大野敬太郎・防衛政務官を長とする調査チームが4回の聞き取り調査を行っており、「処分を含め適切に対応する」と説明した。(矢崎慶一、古城博隆)