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警察官が上司を拳銃で殺害したとされる過去に例のない事件。拳銃を撃った滋賀県警の男性巡査(19)は交番からパトカーで逃走し、隣町の田んぼに乗り捨て、実弾入りの拳銃も捨てていた。採用から間もない警察官が拳銃を携行することに問題はなかったのか。
19歳同僚巡査を殺人容疑で逮捕 交番で警官撃たれ死亡
「親しみ感じていた」交番で…住民不安 警官死亡事件
県警によると、男性巡査は彦根署河瀬駅前交番で上司の井本光巡査部長(41)を交番内で銃撃後、パトカーで逃走。巡査は車の運転免許は取得していたが、パトカーの運転資格はなかった。パトカーは隣町の同県愛荘町で乗り捨てたが、その際に拳銃を警棒や手錠などが付いたベルトごと外して捨てたという。
約700人態勢で巡査の捜索を続けた県警は12日午前1時35分ごろ、近江鉄道の踏切内の線路を歩く男性巡査の身柄を確保。その際、巡査が拳銃を持っていないことに気づいたという。捜査員に対し、巡査は「どこに捨てたかわからない」と答えた。そこから大捜索が始まったという。
周囲は街灯がまばらで暗い。捜査員は田んぼをライトで照らしながら捜し続けた。「真っ暗やし、時間がかかる」。県警担当者は県警本部に待機する報道陣に焦りを見せた。男性巡査も逮捕される午前5時半までの約4時間、拳銃の捜索に加わった。空が明るくなった午前7時ごろ、乗り捨てたパトカーが見つかった地点から北東約600メートル先の同県豊郷町の田んぼの中で、ベルトに付いた拳銃が見つかった。男性巡査が交番で上司を撃ってから約11時間が経過していた。
県警企画教養課によると、警察官の採用者は大卒か否かで分かれる採用区分に応じ、6カ月間~10カ月間警察学校に入校。その後、警察署の地域課などに配属され、3カ月間職場実習を受ける。その間は指導役の先輩警察官が、マンツーマンで交番勤務の手順などを教えるという。
巡査も1月末から4月末まで実習中で、彦根署の別の交番に勤務した後、3月26日付で河瀬駅前交番勤務となり、教育係の井本巡査部長と知り合ったばかりだった。
一方、警察学校では拳銃の扱い方を教える時間も設けられ、実際に拳銃を撃つ機会もあるという。20歳の時に交番勤務で拳銃を携行したという元警視庁刑事で防犯コンサルタントの吉川祐二さんは「事件を起こしてパニック状態だったのではないか。拳銃を放置したのは問題。個人の資質の問題もあるが、改めて銃の適正な取り扱いを徹底させ、本人の適性を見極めて、問題を引き起こす前に組織として前兆を察知することが大切だ」と指摘する。