片岡真実さん
オーストラリアで6月11日まで開かれている巨大な現代美術の祭典「第21回シドニー・ビエンナーレ」で、片岡真実氏(53)が芸術監督を務めている。1973年に創設され、アジア太平洋地域では最古のビエンナーレでアジア人が指揮を執るのは初めて。東京・森美術館のチーフ・キュレーターとしての仕事などが評価された。展示のテーマやキュレーションの楽しみについてシドニーで聞いた。
シドニー・ビエンナーレ注目作は? 社会派も抽象芸術も
◇
シドニー・ビエンナーレの芸術監督はこれまでは英国をはじめとする欧州の人が中心で、そろそろアジア人がやってもいいな、と考えていました。国際展を一人で企画する機会も貴重なので、引き受けました。
テーマに掲げた「スーパーポジション」は量子力学の言葉で、電子などが(同時に違う状態で存在して)状態を決めきれない、その感じが面白いと。従来のヒエラルキー的な社会構造は機能せず、不確定性のような現状がありますから。
展示では艾未未(アイウェイウェイ)の巨大な難民ボートがメディアでよく取り上げられていますが、難民問題を一番のテーマにしたつもりはありません。私の中では、「歴史」とか「土地の所有」とか「抽象」とか、いろんなテーマを考えていて、その一つに「人間の条件」のようなものがあって、難民問題もその一つだと考えています。
一見抽象的なビーズを使った作品もあります。これも、女性による共同の手作業という意味では、男性中心の美術史のなかで、傍流になっている工芸的なものを重視したつもりです。
展覧会全体で何かを主張すると…