公文書問題をめぐる主な流れ
財務省の決裁文書改ざんや防衛省が「ない」としてきた自衛隊のイラク派遣の際の活動報告(日報)が次々に見つかるなど、公文書をめぐる問題が相次ぐなか、公文書管理法の改正も視野に入れた議論が加速してきた。安倍晋三首相は国会答弁で法改正に言及し、与野党はそれぞれ具体的な再発防止策の検討を進めている。
首相は9日、参院決算委員会で「再発防止のため組織・制度の見直しの必要があれば、法改正も含め、公文書のあり方について政府を挙げて見直しを行ってまいりたい」と語った。公文書管理についての集中審議となった13日の衆院内閣委員会では、梶山弘志・規制改革担当相が「法改正も視野に入れた上でしっかりと取り組む」と答弁した。
財務省の改ざん問題が発覚した3月の段階では、政府は新年度から適用される各省庁ごとの新たな文書管理規則を徹底することで当面は対応する考えだった。だが、4月になってイラク日報問題が噴き出し、加計学園をめぐっても愛媛県作成の文書に焦点が当たり、信頼回復に向けた早急な対応を迫られている。
厳しい世論を意識し、与党も動き始めた。自民党は13日、公文書管理に関する改革検討委員会を開催。委員長の新藤義孝・元総務相は「行政に対する不信が増す事態を、一刻も早く止めなければいけない。作業を加速させたい」と強調した。出席議員の一人は「もはや小手先では無理。法改正を含めて抜本的な改革をするべきだ」と話す。同党は公明党とともに月内にも中間報告をまとめ、政府に提言する方向だ。
一方、野党は安倍政権のもとで現行の公文書管理法の趣旨が守られていないと批判を強め、具体的な改正案をまとめ始めた。希望の党は3月末、同法を改正して罰則規定を設ける案のほか、電子決裁の義務化や各省の公文書管理を監視する役職の設置などを盛り込んだ「公文書改ざん防止法案」の骨子をまとめた。
希望の具体案には立憲民主党も賛同。日本維新の会を除く野党6党での今国会中の法案提出をめざす。
公文書管理法に罰則を設ける案について、政府内では「虚偽公文書作成罪など罰則はすでに刑法にある」(内閣府関係者)などと慎重な意見が強い。ただ、公文書をめぐる問題が後を絶たない状況が続き、「徹底した対応を取らないと収まらないだろう」(内閣官房職員)との声もある。