拡散したヘルプマーク転売についてのツイッター上のつぶやき(全国ヘルプマーク普及ネットワーク提供)
外見でわかりにくい障害や疾患のある人が周りの配慮を受けられるよう、自治体から無料で配られる「ヘルプマーク」が、インターネットで売買される例が相次いでいる。障害で取りに行きづらい人が多いのに、多くの自治体が郵送しておらず、やむを得ずネットで手に入れたいという「ニーズ」もあるようだ。
ヘルプカードなぜ知名度不足? 2年前から配布の北九州
「フリマアプリ内での売買が後を絶ちません……。皆の税金で作り必要な方に無料配布している物で儲(もう)けようと商売している(中略)買わないでください」。「全国ヘルプマーク普及ネットワーク」のメンバーが3月、ツイッターでこうつぶやいた。ネット上のフリーマーケットに、1千円前後で出品されたことがわかる複数の写真も添えられ、3万5千回以上リツイートされた。
ヘルプマークは、東京都が2012年に導入。心臓など体の内部の病気がある人や、妊娠初期の妊婦が乗車や災害時に助けを受けられるようにするねらいだ。都では都営地下鉄・バスでマークのイラストを掲げ、「席をおゆずりください」と呼びかける。都は約21万個を配ったほか、趣旨に賛同する自治体が増え、今年2月現在、19都道府県が各自治体の負担で無料で配布する。
だが、ネットワーク創設者の渋谷みち代さん(55)によると、15年ごろから計100個程度の転売を確認している。東京都はアプリの運営会社に削除を求めるが、しばらくすると出品される「いたちごっこ」(都の担当者)だ。
渋谷さんが出品者と連絡を取ると、ヘルプマークが不要な人が転売していたケースもある一方、「大半はマークの利用者だった」という。一時期、自治体の在庫が少なくなったこともあり、転売した人は「ネット上で『手に入らない』という書き込みも多く、欲しがる人がいた」として売っていたという。マークは原則1人1枚だが、複数もらってしまった人が余った分を転売したとみられる。
ヘルプマークを使う京都府の男性会社員(38)は目の難病を抱える。外見ではわかりづらいが、移動が負担だ。偶然、近くの窓口に取りに行けたが、「場所が遠ければネットで買っていたかも。転売が一概に悪いとは言えない」。
朝日新聞がヘルプマークを配る19都道府県に聞いたところ、12都府県が原則郵送していなかった。東京都では、都庁のほか、都営地下鉄や都立病院などで配る。障害者手帳の提示などをせずに申請すれば手に入る。だが、「事務量が膨大になり、原則、郵送はできない」(担当者)。鳥取県も「郵送すると顔を合わせられないので、複数もらう人が出てしまう」と説明する。大半の自治体も「取りに行きやすいよう市町村の役場や保健所でも配布している」とする。
一方、広島と兵庫両県は郵送できることをホームページで明記。広島県は、配り始めた当初は郵送していなかったが、「取りに行けない」との声があることを踏まえた。
障害者福祉に詳しい障害者インターナショナル日本会議の尾上浩二副議長は、障害者差別解消法(16年施行)が、障害者の求めに応じて合理的配慮をするよう官民に求めており、「ヘルプマークはそれを広げていくうえで有効だ」と指摘。「導入する自治体が増えており、必要な人にも届けられるような対応をするべきだ」と話す。(山本恭介)