1年に1度開催される中国全国両会(全国人民代表大会・全国人民政治協商会議)は、国際社会が中国の特色ある社会主義と民主政治を観察する重要な窓口となる。
政治活動は、中国社会主義民主の生き生きとした証を提供している。両会の参政・議政や第14次五カ年計画(2021‐25年)策定のためのオンライン意見公募など、さまざまなチャンネルや形式を通じて、中国の国民は、国と社会の事務、経済、文化事業を管理し、国と社会、そして自身の運命の「ホスト」となっている。
「民主」は、中身のない言葉では決してなく、国民の願いと政府のサービスを結び付ける実質的な実践だ。ここでは、中国が民意を反映させるために取り組んでいることを示す3つのケースを紹介していこう。
環境汚染改善・二酸化炭素排出削減に取り組み、「美しい中国」の建設サポート
全国政協委員・張興贏氏の提案
全国政協委員である中国国家衛星気象センター衛星気象研究所の張興贏所長は、「私は年間を通して、北京郊外にある気象・衛星地上局に何度も足を運び、二酸化炭素をモニタリングしている」と話す。
中国人民政治協商会議第13期全国委員会第4回会議に出席する張興贏所長。
昨年の両会で、張所長は、中国人民政治協商会議に3つの提案を提出した。どれも生態環境、気候変動と関係がある。3つの提案は審議を経て、全て立案され、担当当局から高く評価され、実施された。
張所長は過去数年間、二酸化炭素の排出削減を幅広く、踏み込んで研究してきた。そして、今年初め、生態環境部(省)は、張所長を含む中国の専門家5人を、国連環境計画(UNEP)の「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」科学評価グループ報告を作成する専門家に選出した。5人は世界の気候変動に対応する活動に積極的に参加している。
シェア自転車の二酸化炭素排出削減に対する効果を調査する張興贏所長(写真左から2番目)。
張所長は今年、天地一体化の温室効果ガス業務観測ネットワークのさらなる整備と、「第14次五カ年計画」期間中、大気環境資源の配置を十分に考慮し、生態環境保護と経済成長を両立させるという2つの提案を提出した。
クリーンエネルギー公共バスの推進・応用を提案
王艷代表、「公共バスは社会の意見を集める場」
天津公交集団第三客運有限公司の運転手・王艷さんは、2018年に全人代代表になって以来、毎年、議案を提出し、発言してきた。北京・天津・河北省高速道路の主路線の料金所廃止や、献体プロセスの円滑化といったこれらの民生のニーズに関わる議案は、すでに政府機関や組織が検討を始めている。
今年、王代表が注目しているのは、依然としてクリーンエネルギー公共バスの推進と応用だ。
第13期全国人民代表大会第4回会議期間中、会議に参加する王艷代表(画像は王代表が提供)。
完全電気公共バスを推進・応用すれば、運転手の仕事環境を改善できるだけでなく、都市の環境の改善にも大いに役立つ。しかし、王代表は、「充電施設やクイック充電ポールが少なく、充電にも時間がかかる。これらの問題を解決しないと、クリーン公共バスの大々的な発展は実現できない」と指摘する。
公共バスの運転手でもある王艷さん(画像は王艷代表が提供)。
高級技能エンジニアである王代表は、「第14次五カ年計画(2021‐25年)」期間中に、「後輩を育てて、サービスの水準をもっと向上させたい」という目標もあるのだという。
ネットユーザーの高齢者相互ケアモデルに関する提案が第14次五カ年計画の提案に採用
2020年11月3日、「国民経済・社会発展第 14 次五カ年計画と 2035 年までの長期目標の策定に関する中共中央の建議」の全文を公開した。「建議」を作成するにあたり、インターネットを通じて、社会に意見と提案が求められた。中国が五カ年計画を制定するにあたり、インターネットを通じて社会に意見と提案を求めたのはこれが初めてのことだ。
その中で、「曇帆」というユーザー名のネットユーザーは、「農村部の振興は、農村の人々が互いにサポートし合って高齢者を世話するところから始めなければならないと思う。そうすることで、農村部に残された高齢者たちが居場所を見つけ、都市部で働くその子供たちは安心して起業できる。農村部の人口密集エリアに、政府の財政を投じて、公共食堂や公共宿舎を建設し、希望する高齢者が無料で住み、他の高齢者と一緒に生活できるようにすればいいと思う。まだ若く、身体的にも余裕のある高齢者が、より年配だったり、身体的に不自由な高齢者を世話するという、相互にサポートし合うモデルを作り出せばいいと思う」と提案した。
人民網を通じて自身の提案をチェックするネットユーザーの「曇帆」さん。
ほぼ同じ時期に、別のネットユーザーも、「農村の高齢者ケアは課題中の課題。農村の特色ある効果的な高齢者ケアスタイルを模索することが、絶対に必要だと思う」との意見を寄せた。
報道によると、ネットユーザーたちの提案は、非常に重要視されているという。そして統合的な検討を経て、計画の建議は、人口の高齢化への積極的な対応を、衛生健康の分野に盛り込むのではなく、一つの分野として列挙し、『人口高齢化に積極的に対応するための国家戦略実施』という項目を設けた。また、ネットユーザーの「曇帆」さんが提案した「高齢者相互ケアモデル」も同文書に盛り込まれた。
この件に関し、ある文章は、「末端の庶民が考えていることや願っていることが中国政府中枢に直接伝わるようになった」としている。
取材に応じるネットユーザー「曇帆」さん。
中央民族大学公共管理学部の金紅磊主任は、「ネットで意見を公募し、社会の期待や国民の知恵、末端の経験を十分に、『第14次五カ年計画』の策定に反映させることで、国民のニーズにより近づくことができ、社会の計画策定への参加の程度を向上させることができた」と評価している。
統計によると、2020年8月16日から29日にかけて、オンラインで意見や提案が合わせて100万件寄せられた。意見や提案を寄せた人のうち、政府当局・国有企業関係者が28.8%、専門家が15.4%、学生が11%、自由業者・個人事業者が9%を占めていた。(編集KN)
「人民網日本語版」2021年3月11日