廃品打楽器奏者の山口ともさん=2018年4月10日午後、東京都目黒区、伊藤進之介撮影
ガラクタを操る日本廃品打楽器協会会長 山口ともさん(59)
ビヨョーン、シュワシュワン。文字にするのが難しい音が東京・目黒のスタジオに満ちる。「ガラクタ楽器」は1千を超えた。
八百屋の店先で釣り銭カゴがぶら下がるようなバネひもに、業務用のしょうゆ缶やトマト缶を付けたのが自慢の一品。ひっかくと宇宙的な音がする。こどもの日の前後には、楽器づくりや聴衆を驚かす奇抜な格好でのイベントも。
祖父は「かわいい魚屋さん」の作曲家、父は交響楽団のティンパニ奏者。自身も世界の打楽器を操り、人気歌手らの150以上のアルバムに参加した。舞台の効果音を自分でつくっちゃえと思ったのが妙な道に入るきっかけだった。
で、20年。漬物用バケツや壊れた鍋、家の解体現場やホテルの厨房(ちゅうぼう)を狙う。「一家に1台、宇宙の音はいかが」とバネ楽器を商品化してみたが1台も売れず。「日本廃品打楽器協会会長」を名乗るものの、会員はゼロだ。
それでも、児童施設に招かれ、子どもの笑いを引き出すのにひと役買うことが多くなった。物を大切にと啓発する地域のDVDづくりにも作詞・作曲・出演した。
「ガラクタの音に正解はないから、間違えることもない。雑音も楽しめるんです。還暦後の人生はでっかくみんなで遊びたい。たたけば音の出る公園を造るとか。近所迷惑でしょうけどねえ」(文・市川速水 写真・伊藤進之介)