興福寺旧境内から出土した「酔象」(左上)など将棋駒の赤外線写真=奈良県立橿原考古学研究所付属博物館提供
佐藤天彦(あまひこ)名人(30)に羽生善治(はぶよしはる)竜王(47)が挑戦する第76期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催)の第3局が5月8、9日に奈良・興福寺で開かれる。興福寺の旧境内からは国内最古とされる平安時代の将棋駒が出土しており、日本将棋のルーツを探る上で重要な場所での対局となる。駒を保管する奈良県立橿原(かしはら)考古学研究所(橿考研)付属博物館(同県橿原市)は、8日から特別に無料展示する。
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博物館によれば、展示するのは「天喜六年」(1058年)と記された木簡と一緒に出土した木製の駒11枚(玉将3枚、金将2枚、銀将1枚、歩兵5枚)。高さ2・5~3・3センチ、幅1・5~2・4センチ。厚さ2~5ミリ。橿考研が1993年、興福寺旧境内を調査した際に井戸跡からみつかった。
このほか、2013年の調査で出土した「酔象(すいぞう)」と記された駒も展示する。「承徳二年」(1098年)と記された巻物の軸と一緒にみつかったもので、酔象の駒としては国内最古。酔象は今の主流の将棋には存在しない駒だが、駒の種類や数が多い「中(ちゅう)将棋」などで使われたとみられる。保存処理前で水につかった状態だが、興福寺対局にあわせて特別に公開する。
羽生竜王は、講演などで将棋の起源について話すことがあり、最古の駒に強い関心があるようだ。博物館の吉村和昭学芸課長は「最古の将棋駒と、最古の酔象駒を並べてご紹介するのは初めて。現代につながる将棋の歴史を実感してもらえれば」と話す。
展示期間は5月8~13日の6日間。赤外線写真や解説パネル、木簡もあわせて紹介する。問い合わせは博物館(0744・24・1185)へ。(渡義人)