きょうも傍聴席にいます。
病苦から解放してやりたい――。50年以上連れ添った伴侶に懇願された夫は、妻を自らの手にかけて殺害した。老いゆく体にむち打ちながら介護を続ける夫と、日に日に病状が悪化していく妻。法廷では「老老介護」の過酷さや苦しみが夫の証言から明らかにされた。
1月17日の名古屋地裁。名古屋市北区の自宅で2017年10月、妻(当時79)の首にひもを巻きつけて殺害したとして、嘱託殺人の罪に問われた夫(80)の初公判が開かれた。裁判長から罪状について問われ、「(違うところは)ありません」と答えた。
夫婦は1966年に結婚。子どもはいなかったが、半世紀近く支え合い、連れ添ってきた。妻はリウマチや腎不全を患い、2010年からは週3回、人工透析をしなければならないほど病状が悪化。リウマチで人工関節を埋め込んだひじの痛みにも苦しんだ。数年前から車いすでの生活となり、事件当時の介護区分は、生活全般に介助が必要な「要介護3」だった。
夫も長年の介護で腰の骨を圧迫骨折し、しゃがんだり、立ったりすることさえ困難に。脳梗塞(のうこうそく)も発症し、自身も日常生活で支援が必要な「要支援2」と認定された。それでも、妻の通院の付き添いや入浴介助、食事の世話を続けた。
被告として立った法廷で夫は、過酷な介護の日々を振り返った。
弁護人「家事はどうしていたのか」
夫「全部私がやった。病院に連れて行って帰って、仕事やっての繰り返し」
弁護人「入浴は」
夫「足の先まで洗ってシャワー…