レンジャーズに派遣中の日本ハム・榎下さん
かつて甲子園をわかせた元球児が、新しい道に挑戦している。プロ野球・日本ハムを昨季で引退した榎下(えのした)陽大さん(29)。今季から球団の国際担当スタッフになり、現在は日本ハムが業務提携している大リーグのレンジャーズ(テキサス州アーリントン)に派遣中。野球の母国で刺激を受け続ける毎日だ。
榎下さんは2006年、第88回全国高校野球選手権大会に、鹿児島工のエースとして出場。早稲田実(西東京)との準決勝では、後にプロでチームメートとなる斎藤佑樹と投げ合った。九州産業大へ進み、ドラフト4位で11年に日本ハム入り。昨季限りで現役を退いた。
米国には1月末、アリゾナ州で春季キャンプをするチームとともに渡った。練習を手伝い、チームが帰国した2月中旬、レンジャーズに合流した。「球団から、特に業務を言い渡されているわけではないんです。『何をしてもいい』って」。榎下さんはちょっと困ったように笑う。
「何をしてもいい」とは、仕事は自分で見つけろ、という意味だと解釈。日本のプロ野球に適応しそうな選手を調べたり、レンジャーズのマイナーチームや、米国内の大学などアマチュア選手を視察したりと精力的に活動している。日本ハムが新球場建設計画を進めていることもあり、レンジャーズが建設中の新球場に関する調査もする。
4月9日からはエンゼルスがテキサスに遠征にきた。昨季までのチームメート、大谷翔平とも再会。「すごいな、って言うと、『いやいや、たまたまですよ』って。でも、たまたまで3試合連続本塁打は打てませんからね」と榎下さん。後輩の大活躍を喜ぶ。
球団には、将来的に駐米スカウトのまとめ役になり、大リーグ球団や選手の代理人との交渉役にまで成長してほしい、との思いがある。そのためにも、まず語学。大学時代に中学・高校の英語教師の免許を取得し、米国での日常生活にはまったく困らない榎下さんでも、野球の専門的な内容になると語句の意味を確認することが多い。
同じく選手を引退後、大リーグ球団に派遣されていた経験のある日本ハムの遠藤良平ゼネラルマネジャー(GM)補佐からは、こう励まされた。「『選手やルールは変わるけど、身につけた英語は残る』という話をしていただきました」。派遣が終わる7月まで、野球と英語にどっぷり漬かっている。(山下弘展)