懲戒請求者とみられる人から届いた封書に入っていた、「外患誘致」と書かれた紙片を示す佐々木亮弁護士。右は北周士弁護士=2018年5月16日午後2時3分、東京・霞が関の司法記者クラブ、小松隆次郎撮影
東京弁護士会の弁護士2人が16日、東京都内で記者会見し、インターネット上で懲戒請求をあおられた結果、計約4千件の請求が出されて業務を妨害されていることを明らかにした。2人はこのうち一部の請求者に損害賠償を求める訴えを起こす方針という。
2人は佐々木亮、北周士の両弁護士。2人によると、2016年4月、東京弁護士会が朝鮮学校への補助金支給をめぐる国の対応を批判する会長声明を出した。1年以上たった17年6月、声明による意見表明を「犯罪行為」などとして、佐々木弁護士を含む同弁護士会の10人に対して大量の懲戒請求が出された。ネット上で請求が呼びかけられ、昨年9月には佐々木弁護士の事務所に「懲戒請求者は90億人いる」「外患誘致」などと書かれた封書も届いた。
同弁護士会の役員ではなかった佐々木弁護士には請求を受ける心当たりがなく、ツイッターで請求の動きを批判。北弁護士も佐々木弁護士を支援するツイートをした。すると、2人に対する懲戒請求が相次いだという。
2人は今年4月、ツイッターでこのうち約960人の請求者に対して訴訟を起こす考えを表明するとともに、和解を打診。一部の請求者からは和解の申し出があった。2人に「これで日本がよくなると思った」と話す請求者もいたという。
弁護士の懲戒請求は弁護士法で定められ、誰でも弁護士会に出すことができる。請求があると弁護士会は対象の弁護士に通知書を送り、処分の要否を判断する。佐々木弁護士は「懲戒請求制度を否定するつもりはないが、私の仕事内容も知らずに請求するのはおかしい」と話している。
日本弁護士連合会によると、朝鮮学校の補助金問題を巡る弁護士への懲戒請求は昨年6月以降、急増。ネット上には請求のひな型もアップされていた。(北沢拓也、小松隆次郎)