3階級制覇に挑戦する井上尚弥
プロボクシングで「怪物」と呼ばれる井上尚弥(25)=大橋=が、世界ボクシング協会(WBA)バンタム級タイトル戦(25日、大田区総合体育館)で、日本男子5人目となる3階級制覇に挑戦する。これまでに成し遂げた選手たちは「夢」と掲げてきた。だが井上の場合、少し様子が違う。「区切り」と言えど、ゴールではない。
16日に所属ジムで行われた公開練習。井上は、3階級制覇への意気込みを聞かれ「見ている人がスカッとするように、KOで決めたい。歴史に名を刻むような試合にしたい」と語った。ミット打ちでは、一気に距離を詰める瞬発力や、切れ味鋭いパンチといった強みを最大限披露していた。
ライトフライ、スーパーフライの2階級を制した井上。当時は減量との戦いでもあり、ほおがこけた状態で、公開練習に臨んだこともあった。だが今回は、スーパーフライ級から上限が約1・4キロ増。父の真吾トレーナーも「一番いい状態。笑顔もたまに出る」と太鼓判を押す。
3階級制覇を果たした日本男子は、過去4人。このうち最初の挑戦で達成したのは亀田興毅だけで「小さいときからの夢だった」と語っている。井岡一翔は叔父の弘樹さんが4度挑んでも届かず、自身も2度目でつかんだ「井岡家の悲願」。八重樫東、長谷川穂積の両選手も引退の危機からはい上がり、2度目の挑戦で偉業を手にした。
井上の場合は「他の日本人王者とは、違ったステージに向かいたい気持ちもある」。もちろん25日の一戦に集中しているが、勝った後の青写真もすでに描かれている。団体の枠を超えて世界の猛者がトーナメント方式で戦う「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」への出場だ。すでにオファーも届き「結果次第で、出る方向で考えています」。
井上尚弥は、どこまで強いのか――。周囲の期待とともに、本人もそれを探っているようだ。(井上翔太)
3階級制覇した日本男子選手
亀田興毅 WBAライトフライ級 2006年
WBCフライ級 2009年
WBAバンタム級 2010年
井岡一翔 WBCミニマム級 2011年
WBAライトフライ級 2012年
WBAフライ級 2015年
八重樫東 WBAミニマム級 2011年
WBCフライ級 2013年
IBFライトフライ級 2015年
長谷川穂積 WBCバンタム級 2005年
WBCフェザー級 2010年
WBCスーパーバンタム級 2016年