AbemaTV編成制作本部長の藤井琢倫さん
藤井琢倫さん(AbemaTV編成制作本部長)
今年の初場所から、AbemaTVで大相撲の生中継を始め、朝8時から全取組を放送しています。視聴数は順調に伸びていますね。女人禁制問題も、意外にも悪影響はありませんでした。
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それより、初場所で白鵬、稀勢の里の両横綱が途中休場したときの落ち込みは激しく、休場前と比べて視聴数は10~20%落ちました。
AbemaTV視聴者は、見ながらコメントを書き込めます。他のスポーツ中継と比べても、相撲はコメント欄が盛り上がります。高安(たかやす)が出てくると熊の絵文字、豪栄道(ごうえいどう)が登場すると「GAD」で埋まる。各力士のキャラや愛称を、コメント上でも楽しんでいます。貴乃花親方が出てきたときも盛り上がりました。
力士紹介のテロップは毎日変えます。嘉風(よしかぜ)を「妻にプロポーズの言葉をなかなか言えず観覧車を3回も巡ってやっと切り出した」と紹介すると、「どっからの情報だよ」というつっこみや、「妻よく待ったな」と書き込まれました。地道に取材した裏話や意外な一面を前面に出し、どんな紹介だと反応がいいのか、探っています。
実は、野球の国際大会などで、日本選手がいないなど、日本でなじみのない海外のスポーツは、レベルが高くてもそこまで数字が出ない傾向にあります。身近な応援したい選手がいるかが大切です。その上で、圧倒的に強いことや、成績がいいと、さらに注目が集まります。格闘技に共通するのは、ヒールも人気が出る傾向があることです。
AbemaTVユーザーのうち、スポーツ好きの30代に見てもらうために、力士の人柄とストーリーを前面に出しています。誰と友達で、誰とライバルといった相関図や、人生の折れ線グラフもつくり、取組前に見せます。NHKでは入っていない、力士名のふりがなも入れています。
相撲はすぐに勝負が決まり、短時間に多くの力士名と紹介が画面に出るので、個人を押し出しやすい。自分もそうですが、いままで相撲を見ていない層に感情移入できる力士を見つけてもらい、スターを生み出したい。まずは、その1点に集中していて、伝統や勝負の駆け引きなどの面白さを知ってもらうのは次のステップだと考えています。
中継中に音楽を流し、観戦初心者の女性タレントをゲストに呼んでいます。批判はあるかもしれません。しかし、素朴な疑問をぶつけてもらい、いまさら聞けないことへの説明があると、面白がってもらうきっかけになります。
古くからのファンや、スー女(女性の相撲ファン)、外国人ではない潜在的なファンは、いるはず。若い人に受けるスターをつくれば、もっと相撲をはやらせることができると考えています。(聞き手・後藤太輔)
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藤井琢倫 1983年生まれ。2006年に、AbemaTVを運営するサイバーエージェントに入社。同社執行役員。