東京都内に11戸ある、最高裁裁判官の宿舎の一つ(最高裁提供)
最高裁が、15人の最高裁裁判官向けに用意してきた宿舎の削減を進めている。この10年間で4戸を廃止したが、自宅からの通勤が認められていることもあり、残る11戸は全て空き家。公務員宿舎全体の削減に合わせる形で、さらに3戸を廃止する予定だ。
最高裁によると、最高裁裁判官向けの宿舎は「職務の重要性や特殊性」を考慮し、15人全員の入居を前提に整備されていた。しかし、政府の方針を踏まえて1999年以降は自宅からの通勤を認めており、入居者が減少。長官をのぞけば、この10年では最大7人が入居した時期もあったが、大阪弁護士会出身の木内道祥・最高裁判事(70)が1月に定年退官して宿舎からも退去したのを最後に現在は入居者がいない。
国有財産台帳などによると、現在ある11戸はいずれも、世田谷区や目黒区など東京23区内の一等地にある。築40年前後の一戸建て8戸と1棟3戸の集合宿舎があり、各戸とも延べ200平方メートルを超える。土地価格は約2億7千万~約6億円で、月額賃料は約15万~約23万円という。都内の不動産業者は「交通の便や手入れの状況にもよるが、かなり安い。1・5~2倍でも不思議ではなく、民間ならすぐ借り手がつく」と話す。
国家公務員の宿舎は、2011年に起きた東日本大震災からの復興で臨時増税が議論される中、社会問題化した。国は同年12月、5年間で25%の宿舎を削減することなどを決め、最高裁もこれを機に宿舎を4戸減らした。また、空き家でも維持管理費がかかるため、最高裁はさらに3戸減らすことを決定。「自宅から最高裁に通えない判事が就任する可能性も考え、適切に対応していきたい」としているが、将来的にさらに減らす可能性もある。
ただ、最高裁長官公邸の重要文化財「旧馬場家牛込邸」(東京都新宿区)は宿舎とは違い、海外からの来賓の応対にも使われていることを考慮して存続させる。1928年に建てられた家屋が老朽化しているため、現在は改修・増築を進めており、2019年ごろに完成する見通しという。(岡本玄)