京都大のチームがつくった、再生医療に使えるヒトのES細胞(京都大提供)
再生医療に使えるヒトのES細胞(胚〈はい〉性幹細胞)をつくることに成功し、全国の研究機関に提供する準備が整ったと、京都大が22日、発表した。ES細胞は、iPS細胞と同様に体のあらゆる組織に変化できる「万能細胞」。再生医療の研究に使ってもらい、様々な病気の原因解明や治療法の開発につなげていくねらいがある。こうした取り組みは全国で初めて。
ES細胞は、「生命の萌芽(ほうが)」と位置づけられる受精卵からつくるため、倫理的な課題が指摘され、国内では、動物実験などの「基礎研究」に限って使われてきた。一方、欧米では目の病気や糖尿病、脊髄(せきずい)損傷などの患者に、ES細胞を使った治験が先行。実用化に向けた動きが活発化している。
日本ではiPS細胞への期待が高く、研究や予算も集中しすぎている、との指摘もあった。国は2014年、人を対象とした「臨床研究」のためのES細胞をつくれるように指針を改正。同年施行の再生医療安全性確保法では、再生医療に使う細胞を培養する施設の基準を定めた。
今回の取り組みは、この動きを受けたもの。ES細胞は、京都市内の医療機関から、患者の同意を得たうえで、不妊治療後に余った複数の胚の提供を受け、つくられた。基礎研究用のES細胞に使われるマウスやウシなどの動物に由来する試薬などを避け、安全性を高めた。京大は作製の成功を国に報告し、受理された。今後、必要な手続きを経たうえで、希望する研究機関に対し、夏ごろに配り始めたいという。(野中良祐)
■切り開かれた道 研究積み重ね…