27日、軍事境界線を示すコンクリート製のライン越しに握手を交わす北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長(左)と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領=ロイター
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は27日、北朝鮮の指導者として初めて韓国を訪問しました。韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と板門店の軍事境界線上で初対面し、首脳会談や公式行事に臨みます。11年ぶり、3回目となる南北会談の模様をタイムラインで追います。韓国・北朝鮮に詳しい桜井泉記者の解説も。
向かう様子を生中継(8:40)
韓国のニュース専門テレビ「YTN」は、韓国の文在寅大統領が板門店に向かう模様を生中継している。上空などから車列を撮影し、画面の右上には「平和、新しい始まり」と記されたカウントダウンのデジタル時計が表示されている。文氏が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と初めて会うまでの残り時間を示すものだ。
【解説】保守系団体も南北首脳会談を支持
韓国ニュースチャンネルが文在寅大統領がソウルから板門店に向かう車列を生中継しています。韓国は今回の南北首脳会談を「最大のイベント」としてとらえています。ヘリコプターも空撮。ソウルから板門店まではわずか50キロあまり。すぐに到着するでしょう。
音声では北の代表団がどう座るか、推測して解説しています。側近たちが金正恩氏と並ぶのか、後ろに座るか、あるいは軍の高官はどこに座るのか。金正恩氏とどういう関係にあるのか、どんな交渉になるのかを見定める意図があります。
また、在郷軍人会などの保守系団体も、文在寅大統領を送る行事には参加したと伝えています。ふだん保守系は文氏の言動を批判していますが、今回はそんな人たちも支持をしているということです。
北朝鮮の労働新聞や朝鮮中央通信が、今回の会談をどう報じているかも解説しています。統治スタイルの違いに注目し、金正恩氏が新年の辞で自ら表に出てきたのは新しいスタイルで、実は祖父の金日成氏に似ていると専門家が指摘しています。父の金正日氏は新年の辞などもやらず、新聞で社説を出すだけでした。
文在寅氏が板門店に到着した。(9:01)
金正恩氏、韓国側に入る(9:30)
金正恩氏が北朝鮮側の一行とともにゆったりとした足取りで姿を現した。文在寅氏に笑顔で歩み寄り、軍事境界線を挟んで握手。文氏も笑顔。続いて金氏は大股でゆっくりと境界線を一歩踏み越えた。AFP通信によると、文在寅氏は金正恩氏に「会えてうれしいです」と述べた。
さらに、2人は手を取り合ったまま、北朝鮮側に一歩を踏み入れた。金氏が文氏をうながしているように見えた。予定になかった演出の可能性もある。
韓国のニュース専門テレビは、何度も「歴史的出会い」と強調していた。両首脳に花束を贈ったのは板門店近くの小学校の男女。金与正氏にも花束を贈った。
金正恩氏が署名「新しい歴史は今から」(9:42)
金正恩氏が板門店の韓国側施設「平和の家」で芳名録に署名した。「新しい歴史は今から。平和の時代、歴史の出発点から」と記帳した。韓国のテレビ局によると、金正恩氏の妹の金与正氏が、モンブランの万年筆を差し出し、それを使って署名したという。
【解説】韓国では、男も女もよく手をつなぎます
両首脳が手をつないだのが印象的です。歴史的な光景に、テレビ中継を見ていた朝日新聞の編集局でも大きな声が上がりました。日本では同性同士ではあまり手をつなぎませんが、韓国の人たちは男でも女でもよく手をつなぎます。自然なやりとりだと思いました。
2人は握手したのち、まず金氏が軍事境界線を越えて韓国側に入りました。このあと、文氏が金氏とともに北朝鮮側に入りましたが、これは予定にはありませんでした。文氏が北側に配慮したのかもしれません。
一方で、朝鮮戦争後に初めて南北首脳会談が行われた2000年には、韓国の金大中大統領と北朝鮮の金正日総書記は会った際に両手で握手し、別れ際に抱擁しました。今回はお互いににこやかな表情ではありましたが、抱擁には至りませんでした。
当時と今とでは状況がまったく違います。当時、北朝鮮はまだ核実験をする前でした。今は核保有国であると宣言し、より強い立場にいるという言い方もできます。
今回の首脳会談は、北朝鮮の核放棄が最大の焦点。世界が注目する中で、あまり強く歩み寄りをすることは控えたのではないでしょうか。厳しい交渉になることが予想されます。