平昌冬季五輪のフィギュアスケート男子フリーで演技する羽生結弦
「育ててくださった全ての方々の想(おも)いがこの身に詰まっている」
羽生結弦選手に国民栄誉賞決定 23歳、個人では最年少
国民栄誉賞の受賞決定を受け、1日に発表されたコメントの中に、羽生結弦(ANA)らしい言葉があった。
羽生は、様々な人の助言や知見の中で、自分に合う手法を取捨選択してきた。感覚を自分なりの言葉にし、積み重ねて成長の糧にした。「自ら考える」「言葉にして整理する」ことの強さを、改めて示したアスリートだ。
小学校低学年のころから、コーチに勧められてノートに思いを書き留めてきた羽生。ソチ五輪前、寝る直前に布団でイメージトレーニングをし、ひらめきがあれば起き上がって記録すると語った。平昌五輪では右足首のけがを抱えていたが、練習できない分、「勉強した」という。ケガからの回復と復帰について書かれた記事や論文を読んで本番に備えた。
筆者は今年5月、米大リーグで活躍する大谷翔平について、その成長を見てきた2人に話を聞いた際、「同じ23歳の羽生と似ているな」と感じた。北海道日本ハムスカウト顧問の山田正雄氏は「この道が好きで、自らやっている。やらされていない」と話し、他者の助言を自分なりにアレンジできる長所を語った。ライターの佐々木亨氏は、「言葉を書き、頭に入力する習慣」を力の原点に挙げた。
「まだ続く道を一つ一つ丁寧に感じながら、修練を怠ることなく、日々前に進んでいきます」ともつづった羽生。これからも、積み重ねた貴重な経験を豊富な言葉にして、多くの人と共有していってほしい。(後藤太輔)