東京地検などの捜査対象となった神戸製鋼所の関係先
東京地検特捜部と警視庁が5日、神戸製鋼所への強制捜査に踏み切った。品質データの改ざんが長年にわたって社内で広く常態化していたことや、国外への影響も大きいことを重く見たためだ。この日、捜査幹部は「法人としての刑事責任追及も視野に組織的な不正を解明したい」と語った。
神戸製鋼所の東京本社を家宅捜索 データ改ざん問題
神鋼が昨年10月上旬に品質データ改ざんを公表した当初、東京地検などは捜査に消極的だった。製品自体に問題はないと同社が表明していたうえ、取引先の企業も捜査当局に被害を申告しなかったためだ。むしろ、捜査することによって、安全性への不安を指摘されるなどの「二次被害」を懸念していた。
だが、神鋼の社内調査が進むにつれ、不正が行われた工場の数や製品の種類が拡大。同社幹部ら四十数人が不正を認識していたことも判明した。神鋼の調査報告書などによると、問題の製品は2016年からの1年間で国内外延べ688社に販売され、新幹線や航空機などにも使われていたという。
神鋼の16年度の売上高1兆6958億円のうち海外分は約3分の1に上る。製品は米航空機メーカー、ボーイング社などにも販売されており、神鋼は10月中旬、米司法省から「サピーナ」と呼ばれる拘束力の強い召喚状に基づき、米顧客に販売した製品に関する資料の提出を求められたことを公表。検察内部にも「日本側が何もしないわけにはいかない」(幹部)との危機感が強まった。
米国の司法制度に詳しい前田陽司弁護士は「日米でそれぞれ捜査され、罰金を科される可能性はある」と指摘する。過去には自動車部品などのカルテルで、日本の公正取引委員会と海外の捜査当局両方から罰金が科された事例もある。
それでも、捜査当局は、日本で捜査が進展中は米司法省も日本の捜査を優先する可能性があると判断。「製品が各国に輸出され、影響が大きい。日本企業の信用にかかわる」(捜査幹部)として、日本の製品全体への信頼回復のためには、強制捜査が不可欠だと判断した。
■傷む信用、経…