最初の会合を終え、記者会見で手応えを語ったWADAアスリート委員会のベッキー・スコット委員長(中央)
ドーピング問題から潔白なアスリートを守るため、世界反ドーピング機関(WADA)のアスリート委員会が「アスリート憲章」の作成に本腰を入れている。4日から2日間、カナダ・カルガリーで第1回会合「グローバル・アスリート・フォーラム」が、54カ国からアスリート出身の計104人が出席して開かれた。
2014年ソチ冬季五輪でのロシアの組織的なドーピング問題が発覚した当時、大会にドーピング疑惑のある選手も参加していた。「(潔白な選手の)権利が守られていない」と訴えたアスリートも少なくない。成文化することで潔白な選手の権利を強化し、競技団体など組織の意思決定により関われるようにしたい狙いがある。
今回は出席者に憲章の初稿が披露された。「説明責任の権利」「自由な発言権」など16項目からなるという。守らなかった場合は、何らかの処分を下す方向で調整中。2021年からの運用に向けて改訂されるドーピング取り締まりの国際基準「統一コード」に盛り込もうともしている。
ベッキー・スコット委員長(カナダ)は「大変有意義だった」と喜んだ。会合後にはロシア反ドーピング機関(RUSADA)の資格回復に対するWADAの方針を支持するとも発表。①WADA調査チームが明らかにしたロシアの組織的なドーピングを公に認めること②検体や検査データが残るモスクワ検査所の調査をさせること――の2条件が満たされない限り、ロシア反ドーピング機関の資格回復は認めないことを委員会としても求めた。
会合には、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)アスリート委員で、元日本代表の3人も参加。フェンシング出身の池田めぐみさんは「よい未来にするために意見できる機会」と刺激を受けた様子。陸上出身の室伏由佳さんは「競技レベルに関係なく、この内容を次世代にどう伝えていくか」と言い、重量挙げ出身の斎藤里香さんも「今後の活動に生かすため、JADAのアスリート委員会で一回話をして意見をまとめたい」と話していた。(遠田寛生)