「レギュラー153円」のガソリンスタンド=2018年5月30日、東京都新宿区
レギュラーガソリンの値段が、3年5カ月ぶりに1リットルあたり150円を突破した。原油の値上がりは電気代やクリーニング、海外旅行にも影響が及ぶ。一方で、価格転嫁が難しい中小企業もある。
国内のガソリン価格の変動は、原油の国際価格から1~2週間ほど遅れる。国際指標となる「米国産WTI原油」の先物価格は5月中旬、1バレルあたり70ドル超の高値圏で推移した。
その後、WTIは70ドルを割り込んだが、価格上昇の原因となった中東や南米ベネズエラの情勢は先が読みにくい。「供給力不安は残り、引き続き上昇圧力になる」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之・主席エコノミスト)との声もある。
30日朝、東京都新宿区のガソリンスタンドは「レギュラー 153円」の看板を掲げていた。値上げのペースを4月から速め、5月中旬から150円超。店長の伊藤和也さん(41)は「満タンまで給油する人は減っている」と話す。
原油高の影響は電気やガスの料金にも及ぶ。30日、東京電力など電力大手6社は7月分の電気料金の値上げを発表した。原発再稼働を進めた関西電力は値下げするが、大阪ガスなど都市ガスの主要4社も値上げを公表した。
クリーニング大手、白洋舎(東京都大田区)は6月、約11年ぶりの値上げに踏み切る。ドライクリーニングや水洗いの料金を約5%上げる。洗剤や衣服を包む袋など多くの石油製品を使っており、「会社の努力だけでは限界がある」と担当者は話す。
日本航空と全日本空輸は8~9月発券分の国際線の燃油サーチャージ(特別付加運賃)を引き上げる方向だ。
その幅は未定。ジェット燃料の市況価格を料金表に当てはめれば、片道でハワイ便は6~7月より2500円高く、欧州便や北米便は3500円高くなる計算だ。全日空の平子裕志社長は「原油高はエアラインにとっては非常に悩ましい」と話す。
価格転嫁は中小企業には簡単ではないようだ。
トラック約40台で大手スーパーに食品などを届ける関東の運送会社は、今年に入って運送費用が1割膨らんでいるのに、値上げ交渉は進まない。急発進をしないなどガソリンの節約を運転手に呼びかけ、急場をしのぐ。
漁業にも影を落とす。
船を動かすA重油の5月の価格は、農林水産省によると、前年同月より2割近く高い。イカ釣りの場合、小型の船でも一晩の操業で数百リットルの重油を使う。数千円から1万円以上も負担が増えかねない。
スルメイカ漁の解禁を6月1日に控えている北海道南部のひやま漁協の関係者は「不漁だと赤字になりかねない」と話す。