好投した宮崎産業経営大の杉尾
宮崎を代表して全国で勝ちたいと燃え、グラブは県の形のシルエットがついた宮崎牛革製。全日本大学野球選手権第2日の12日、初出場の宮崎産業経営大(九州南部)は、エース杉尾(3年、宮崎日大)があふれんばかりの地元愛を胸に、創価大(東京新)を破った。
チームで甲子園のグラウンドに立った経験があるのは自分だけ。3年前の夏、1回戦で上田西(長野)と対戦したが、0―3で敗れた。この黒星がエネルギーの源泉になっている。
「県民の期待に応えられなかった。申し訳ない気持ちでいっぱいでした。もう一度、県代表として全国で結果を出したかった」
九州や関東の大学から声がかかったが、選んだのは実績に乏しい地元校。大学側は来てくれるとは思いもよらず、特待制度もないため、三輪監督は一度、高校側に断りに行ったという。
思いをぶつけた初陣は、八回に2失点して降板したが、4連続を含む10奪三振。要所で切れのある球を低めに決めるうまさを見せ、打線を奮起させた。念願の「1勝」に思わず顔をほころばせ、「うれしい。ほっとしています」。
入学当初、練習量は少なく、「がっかりした」。グラウンドは系列高校の間借りで、ただでさえ活動が制限されるのに、それに甘んじていた。1年生の立場で「情けない」と先輩を鼓舞したことも。「自分だけでやっても野球は勝てない。それは分かっていたので」。変わったのは新チームになってからだ。主将の若松が杉尾の思いをくみ、引っ張ってくれた。朝の全体練習が始まり、3人だった夜の自主練習は今、20人以上はやっている。
潜んでいたやる気が引き出されたチームは、とにかくベンチが明るい。「全国の舞台で少しでも成長したい」と、杉尾はもちろんまだ満足してはいない。(隈部康弘)