史上初の米朝首脳会談から一夜明けた13日のシンガポール朝刊各紙。一様に好意的に報じた=シンガポール、守真弓撮影
史上初の米朝首脳会談から一夜明けた13日、開催地となったシンガポールの地元紙は「平和への長い道のりの第一歩となった」(ストレーツ・タイムズ)などと、こぞって会談を好意的に報じた。両首脳が12日夜に去り、厳戒態勢が解けた街には日常が戻った。
大手紙ストレーツ・タイムズは朝刊の大半を使って会談を特集。トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が握手する写真を1面で大きく扱い、各面でも写真をふんだんに使って詳報。「シンガポールでつくられた歴史的瞬間」といった見出しが躍った。
オピニオン面では、シンガポールが果たした役割について編集委員のコラムを掲載。権威主義的な政治体制を残しつつ経済発展を実現したシンガポールでの滞在によって、「(正恩氏らが)西欧の非難を気にせずに経済発展できると気がついたのではないか」との見立てを紹介した。
会談が開かれたセントーサ島には、旧日本軍が占領時に捕虜の収容所として使用した戦跡がある。同紙は、こうした戦跡に首脳会談を祝うガーベラやユリの花飾りが置かれていたことも紹介し、「戦争を経験した島で今度は平和が実現する」と紹介した。
華字紙・聯合早報も「世紀の握手」として、あいさつを交わす両首脳の写真を掲載し、「東アジアの平和に向けて歩み出した」との論評を掲載。タミル語紙のタミル・ムラスも「歴史的な会談は成功した」と1面で報じた。
また、米国務省がポンペオ国務長官の記者会見の映像を公式サイトで流した際に、誤って会見場所を「マレーシアのシンガポール」と記載したことにも各メディアが言及。シンガポールは1965年にマレーシアから分離独立しており、地元のネットメディアなどは「米国はまだシンガポールをマレーシアだと思っているのか」と皮肉る記事を相次いで掲載した。
リー・シェンロン首相は会談後の12日夜、両首脳にあてた「会談が成功裏に終わったことを祝福する。ホスト国として両首脳を迎えたことは光栄だった」との書簡を公開した。(シンガポール=守真弓)